黒ずくめ 2

 家に帰っても、私の興奮は冷め切らなかった。黒ずくめは…

「涙子、来なさい。」

「はい。」

 リビングまで走った。

「また授業出てないよね。」

「すみません。」

「なんで?」

 言えない。

「なんで。」

 答えられない。

「答えて。」

 もう、答えてもいいんじゃないか。言い終わったら死ねばいいんじゃないか。

「涙子。」

「お母さんと一緒にいると、つらくて。」

「何?」

「お母さんに何か言われるたびにやる気が失せるので、宿題もやりたくないし、授業にも出たくないです。傷つけられるのに疲れました!」

 飛んできたのは平手打ちだった。やっぱり。

「何言ってるの!責任を私に押し付けるな!おまえのせいだろ。」

「そういうところがです。」

 再び、頬に痛みが走った。

「すぐ手を出すところもです。」

 今度は頭に重みを感じた。


 マンションの屋上に、涙子は来ていた。

 飛び降りを、するつもりだったのだ。もう、黒ずくめを探すことなく、終わりにしてしまう。

 さあ、さようなら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る