黒ずくめ

 再び私は保健室登校をするようになった。私は本気で死ぬ気でいた。黒ずくめにもう一度会って、あの薬をもらいたかった。

 春霞の死が服毒による死だったと証明された時、私は黒ずくめが本当に実在すると知った。

 ならば私も、それを手に入れたい。

「ねえ、春霞殺したのもあんた?」

「違います。」

 保健室に押し掛けた男子達を先生が説教し、もう二度と用もないのに来ないことを約束したため、三人がまた保健室登校で来ている。

「だって、私の写真ばらまいたのそうだったじゃん。」

「違います。」

「まあ、春霞殺したのは違うだろうけど。」

「どちらも違います。」

「だってさ、春霞は服毒死じゃん?その劇薬、私知ってるし。」

「ねえ、杏奈、涙子ちゃん困ってるよ。やめてあげな。」

「鈴はちょっと黙ってて。」

「薬、もしかして持ってます?」

「え?春霞の劇薬?持ってるよ。一瞬で死ねる薬、だっけ。」

「涙子ちゃんと杏奈、何話してんの?」

「春霞が死んだ薬、持ってるよって。」

「何言ってんの?公表されてないじゃん。頭どうかしてるって。不謹慎だし。」

「そうだよ、失礼だからやめなよ。」

 

 その日の放課後、帰ろうとする杏奈を捕まえて、わざわざ家の反対方向に歩いて、杏奈から話を聞いた。

「薬って、誰からもらいましたか?」

「え?なんか真っ黒な服着た女の子。」

「女の子?どうしてそう思ったんですか?」

「声が女の子だったから。声が可愛い男の子だったら分かんないけど。私より小さかったし。」

「林さんって死にたいの?」

「分かんない、だけどもらっといた。」

「そうですか。」

「あんたも持ってんの?」

「いいえ。」

「でも知ってるよね?」

「知りません。」

「嘘つかないで。私は話したでしょ?」

「知ってます。」

「もらったんでしょ?」

「断りました。話してくれてありがとうございました。」

「ふーん」

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