夜の街で

 小さい時からずっと我慢して、耐えてきていたのが、保健室登校として、そして死への願望として明るみになっていた。


 涙子は夜の公園にいた。窓を渡って外に出てきたのだ。黒ずくめを、探すために。 

 涙子はもう、自分の妄想だろうと何だろうととことん付き合う気でいた。自分は黒ずくめが何かを変えてくれるのではないかと期待したのだから。

 公園でブランコを漕ぎ、地下の駐輪場を歩き回り、通っていた小学校を訪れた。河川敷や、お祭りで行った商店街、古びた歩道橋。涙子は夜の徘徊を日常にした。どこかを歩いている黒ずくめに見つけてもらうか、見つけようと思っていたのだ。

 そこで、涙子は思わぬものを目にする。 


 夜の街の徘徊を始めてしばらく、保健室登校を止めて、授業に出ることにした。母親がうるさいのもあったが、理由の大部分は自分の気持ちが占めていた。

 毎日夜、外に出てほとんど寝ていないのに、気持ちが高ぶって、自分は何でもできる気がしているのだ。

 夢の中にいるように、学校へ行き、授業に出て、家に帰る。何もせず、夜まで眠り、夜の街へと繰り出す。母に何を言われても、聞かれても、言われた次の瞬間には忘れていた。意識がしっかりしているのは、夜、外にいる時だけで、黒ずくめだけを追い求め、それが生きがいだった。

 家の付近を一通り歩き回って、遠くのショッピングモールまで足を伸ばし、家へ帰っていた時のことだった。

 道筋の建物から、一組の男女が出てきた。かなり身長差のある二人だが、仲良さそうに手を繋いでいる。

 女の方がちらりと振り返った。

 私は、同級生の秘密を知ってしまったようだ。

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