園崎さんはメンヘラです。

中田もな

「園崎さんはメンヘラです」

「園崎さんは、メンヘラですね」

 僕が小学五年生の頃、僕の幼馴染の園崎さんは、かかりつけの医師からこう言われました。

「園崎さんの場合、『メン』という言葉がトリガーとなって、メンヘラを発症するようです。『メン』を聞くと『ヘラ』ってしまう、ということですね」

 この日から、僕は園崎さんのサポートをしようと、強く心に決めました。

「ごめんね、あおぴー。私が剣道クラブの鷹くんにフラれて、その時に『めーんっ!』って声が聞こえてきたから、メンヘラになっちゃったんだって……」

「園崎さん、そんなに落ち込まないで。僕と一緒に、メンヘラを克服しようよ」

 園崎さんのサポートは、苦難の連続でした。

「今日の給食は、みそラー『メン』でーす」

 給食委員がこう言うと、

「どうせ、私なんて……。まじムリ……」

 とつぶやいて、カッターを取り出してしまいます。

 中学生の頃、文化祭の出し物でラップをやろうと決めたときには、もっと大変なことになりました。

「Hey,『man』! Yo,『man』!」

「うわぁぁぁぁぁん! もうムリ! 死にたい!」

 園崎さんは自暴自棄になり、屋上から本当に飛び降りようとしてしまいました。僕は必死に後を追いかけて、園崎さんの肩を掴みました。

「園崎さん! 死んじゃだめだ!」

「だって、だって……! 私なんか、私なんか……!」

 園崎さんは、涙をぼろぼろ流しました。きっと、辛かったのだと思います。日常生活には、「メン」があふれているのですから。でもぼくは、彼女の目を見て言いました。

「一人で抱え込むなよ! 僕がずっと、傍にいるから!」

 僕は園崎さんに言いました。園崎さんがメンヘラを卒業できるまで、ずっと一緒にいるから、と。

「ううっ……、あおぴー……。本当に、ありがとう……」

 それから僕は、園崎さんをサポートするために、毎日勉強に励んでいます。園崎さんがメンヘラを克服できたら、僕は園崎さんに、僕の気持ちを伝えたいです。……「好きです」、と。

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園崎さんはメンヘラです。 中田もな @Nakata-Mona

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