第27話
オーガが去っていった後、俺は警官が殺された場所まで歩く。
そこには脳漿や、オーガが食べ残した肉片などが固まって、血溜まりを作っていた。
その中に、警官が使っていた銃も残されていた。
「助けられなくてすまん…これ、もらっていくぞ」
俺は血溜まりの中から銃を拾い上げる。
弾が手に入れば、使う機会もあるかもしれない。
俺は銃を収納スキルで収納しておく。
「はぁ…」
思わずため息を吐いた。
見据えてておいて銃だけ回収するのが、なんだか居た堪れない気持ちになったのだ。
しかし、自分の選択が間違っていたとは思わない。
俺が介入したところでどうにかなったとは思えないし、世界がこうなってしまった以上、俺は自分の命を最優先に動く。
他人のことなど考えている余裕はない。
人助けはするとしても…それは、自分が確実に助かるという余裕がある時だけだ。
そうあらかじめ決めておかないと、いざってときに迷いが生じてしまうからな。
「まぁ、あいつのためになら…命をかけてもいいが…」
俺が唯一自分の命を投げ打ってでも助けるとしたら、それは、俺を最後まで見捨てなかったあの幼馴染だけだな。
あいつのためだったら、俺は自分の命を犠牲にすることに躊躇わないだろう。
だが、それ以外の人間を、自分が死ぬかもしれない状況で助けようとはとても思えなかった。
「俺は…身勝手なのか…?いや、この状況なら誰だってそうするだろ…」
自分が特別薄情なわけではない。
これは極めて理性的な判断だった。
俺は自分に必死にそう言い聞かせる。
「…さっさと強くなるのが手っ取り早いか…」
しばらくして、うだうだ考えていてもしょうがないと、俺は動き出す。
余裕さえあれば、人助けだって出来るんだ。
さっさとレベルを上げて、スキルを増やして、助けられる人間を助ければいいじゃないか。
「行くか…」
思考を切り替えた俺は、倒せそうなモンスターを探して歩き出した。
それから一週間、俺は毎日をモンスター討伐に費やした。
朝起きてクロと朝食を取り、金属バット片手に街に繰り出す。
そして見かけた倒せそうなモンスターを、片っぱしから殺していった。
初日に比べてモンスターは減ったとはいえ、まだまだ生きた人間を探して街の各地を彷徨いている。
俺はそいつらを一方的に殺してレベルを上げ、スキルポイントを貯めて様々なスキルを獲得した。
その結果、一週間が経過した現在、俺のステータスは見違えるほどに強化されていた。
名前:西村博隆
レベル:48
スキルポイント:290
スキル:回復、収納、鑑定、加速、浮遊、探知、転移
獲得可能スキル一覧
・消去スキル(必要スキルポイント300)
・予知スキル(必要スキルポイント500)
「だいぶ強くなったよなぁ…俺」
一週間、朝から晩までモンスターを狩り続けた結果、俺のレベルは2倍以上になった。
スキルも増えて、あれから新たに、加速、浮遊、探知、そして転移のスキルを獲得した。
この中でも1番有用なのが転移だ。
何とこのスキル、見える範囲に一瞬で移動できるスキルなのだ。
どんなに距離が離れていても、視界内に入っていれば、その場所に瞬間的に移動できる。
今手持ちのスキルの中では、群を抜いて強いスキルだ。
ただし、何回でも使えるというわけではなく、一日に三回までという回数制限がある。
なので、移動が面倒だからという適当な理由で使っていては、いざというときに対応できない。
今のところこのスキルは、本当の窮地に立たされた時にのみ使うことにしていた。
さらに、現在の俺は、レベルアップによって身体能力も圧倒的に強化されていた。
レベルが30を超えるまでは、レベルが上がることによる恩恵をいまいち実感できなかったのだが、30を超えたあたりから、明らかに身体能力が上がっていることを自然と自覚した。
脚力、体力、視力、聴力、気配察知能力、あらゆる身体機能が、以前と比べて格段に強化されている。
例を挙げるなら、レベルが50一歩手前まできた今の俺は、数メートルの塀普通にジャンプで飛び越えられるし、耳をすませば、数十メートル先のモンスターの足音を聞き分けられる。
まさに漫画の強キャラのような体を手に入れてしまったわけだが、レベルアップで今後これ以上に強くなると思うと、少し末恐ろしくもなる、
だが、こんな世界において、強くなりすぎるということはないだろう。
今後あらゆる状況にも対応できるよう、俺はレベリングをやめるつもりはなかった。
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