第15話
「はぁ、はぁ、はぁ…」
荒くなった息を時間をかけて整える。
目の前には、豚頭のモンスターの死骸。
俺に何をされても無抵抗のこいつを、俺は金属バットで滅多うちにした。
何発打ち込んだかは覚えてない。
しかし、気がつけば豚頭は動かなくなっていた。
「ふぅ…」
ようやく息が整ってきて俺は一息ついた。
パンパカパーン!!
場違いなファンファーレの音が頭の中で響いた。
〜オーク一体の討伐を確認しました〜
〜レベルが18になりました〜
〜スキルポイントを100獲得しました〜
頭の中で次々にアナウンスが鳴る。
この豚頭のモンスター……オークを倒したことで、またレベルが上がり、スキルポイントも獲得したようだった。
俺は自分のステータス画面を確認する。
名前:西村博隆
レベル:18
スキルポイント:180
スキル:回復
獲得可能スキル一覧
・加速スキル(必要スキルポイント10)
・収納スキル(必要スキルポイント50)
・浮遊スキル(必要スキルポイント200)
「スキルが増えてるな…浮遊?飛べるってことか?」
レベル、スキルポイントに加えて、新たに獲得可能なスキルが増えていた。
浮遊スキル。
詳細説明がないのでわからないが、多分宙に浮くことができるスキル、だと思う。
獲得に必要なスキルポイントは200。
現状だと、スキルポイントが20足りない。
「どうしよう…あと20貯まるのを待つか…それともここで収納スキルを獲得するか…」
収納スキルを獲得すれば、おそらく今持って帰れる食料が増えるかもしれない。
が、その代わり、スキルポイントを50消費するため、浮遊スキル獲得が遠のいてしまう。
俺はこの場で収納スキルを取るか、それとも浮遊スキルを獲得できるようになるまで待つか、じっくりと考える。
「…浮遊スキルは戦闘ではかなり役に立ちそうだよなぁ」
もしこのスキルが、自身の体を宙に浮かせることのできると言った類のスキルなら、空を飛べないモンスターに対して上空から一方的に攻撃を加えたりすることが出来る。
また、万一の時も上空に避難するなど、回避の手段としても有効だ。
しかし…
「俺、モンスターに襲われないんだよなぁ…なぜか」
そう。
つい先ほど、俺はなぜかモンスターに襲われない特性を持っていることが判明したのだ。
別にわざわざ浮遊スキルを使うまでもなく、俺は現状、モンスターに対して一方的に攻撃を加えることができる。
いや、まだ確定ではない。
もしかしたら今後、俺に襲いかかってくるモンスターが現れるとも限らないし、油断が禁物であることは確かだ。
けれど過去三回続いた事例を、流石に偶然で済ませることもできない。
今は…俺はモンスターに襲われないものと思って行動しておくことにしよう。
「だったら収納スキルだな」
考えた末、俺は収納スキルを獲得することにした。
「こうして…こうっと」
ポイントを消費し、収納スキルを獲得する。
名前:西村博隆
レベル:18
スキルポイント:130
スキル:回復、収納
獲得可能スキル一覧
・加速スキル(必要スキルポイント10)
・浮遊スキル(必要スキルポイント200)
「ちゃんと反映されてるな」
再度ステータスを確認すると、所持スキル一覧に収納スキルが追加されていた。
俺は早速収納スキルを試してみることにする。
「スキルを使うには…スキル名を言えばいいんだよな」
回復スキルを使った時に、スキルを使うにはスキル名を唱えればいいことは既に確認済みだ。
俺は手近なおにぎりを手に取って、スキル名を唱えた。
「収納!……おおっ!?」
収納スキルを使用した瞬間、手のなかのおにぎりがふっと消えた。
思わず辺りを見渡すが、消えたおにぎりはどこにもない。
「ええと…取り出すときはどうすればいいんだ…?」
もう一度スキルを発動させればいいのだろうか…?
物は試しだ。
「収納!」
おにぎり出てこい!と頭で念じながら再度俺は収納スキルを使う。
「おおおっ!!」
すると、俺の手の中にはいつの間にか先ほどきえたおにぎりが乗っていた。
思わず大声を出してしまう。
「すげぇ…まじかよ…」
収納スキルは俺が思っていた通りのスキルだった。
これで労力を使わずに、物を持ち運びすることができる。
「あとは容量だな…」
俺はこの際、収納スキルでどれほどのものを収納できるのかを試してみることにした。
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