第16話
「すげぇ…まだまだ入るぞ…容量は無制限なのか…?」
収納スキルを獲得した後。
俺は店内に残っていた食品を、保存が効きそうなものから順にどんどん収納していった。
このスキルがいったいどれほどのモノを収納できるのか、試すつもりで、ともかく片っ端から食料や飲料を収納していったのだが、全然限界が訪れる気配がない。
既に残っていたコンビニの食料の半分以上を収納してしまったが、まだまだ収納できそうだった。
「まじかよ…便利すぎるな…」
これだけのモノを収納し、持ち運びできて、さらには頭でイメージするだけで即座に取り出すことができる。
この収納スキル、あまりにも便利だ。
「こうなったら、店内の食料は全部俺がいただきだな」
一瞬、今後ここにくる人間のために少しは残したほうがいいんじゃないかって思考が過ったが、今は他人を庇っている場合じゃない。
こうなってしまった以上は、とにかく自分の命を最優先に考えなくては。
「おいおい、まじかよ…本当に全部詰め込めたんだが…?」
そうこうしているうちに、コンビニへ来て1時間が経過していた。
気づけば商品棚には食料がすっかりなくなっており、店内の食料全てを俺は収納してしまっていた。
まさか本当に全てを収納できるとは思っておらず、俺は信じられない思いでしばらく呆然としてしまった。
が、やがて我に帰り、とりあえず帰宅してこれからの方針を考えることにした。
犬用の餌も収納したため、自宅で待つクロの餌の確保もバッチリだ。
「予想外の収穫だ…これだけの食料があればひと月は大丈夫だろうな」
保存の効きそうな食料もずいぶん収納することができた。
腐りやすいものから先に食べていったとして、一ヶ月は余裕で生きていけるだけの食糧を確保することが出来た。
俺は想定以上の収穫に満足し、全く必要なかったリュックを背負ってコンビニを後にした。
「帰ったぞー、クロ」
『クゥン!クゥン!』
帰宅すると、奥で待っていたらしいクロが尻尾をふりながら廊下を走ってきて、俺に飛びついてきた。
「おぉ…!よしよし」
『クゥンッ!』
甘えるような鳴き声をあげながら、ベロベロと俺の顔を舐めてくる。
「約束通り帰ってきたぞ?ほら、お前のご飯も取ってきたからな」
俺は収納スキルでコンビニから取ってきたドックフードを取り出してクロに見せた。
『ワフッ!!フッフッフッ!!』
クロはドックフードの詰まった袋の匂いを嗅いだ後、尻尾をブンブンと振って「早く頂戴!」というように吠えた。
「よしよし…今あげるからな」
俺はリビングへと行き、皿の上にドックフードを入れて床に置いた。
『ワフッ!!』
待ってましたとばかりにクロが飛びついた。
「よく噛んで食べろよ〜」
詰まらせないか心配な勢いで食べているクロを見つめながら、俺も収納スキルからおにぎりを取り出して食べる。
「…それにしても…まじで俺、襲われないんだなぁ…」
ツナマヨおにぎりを咀嚼しながら、俺はコンビニからここまでの帰路を思い出す。
回り道をしたりして、行きの時間は30分以上を要したが、しかし、帰りは十分程度でここまで帰ってこれた。
理由は、道中一切モンスターに襲われなかったからだ。
目の前にいながらモンスターに全く襲われないという事例が三回続き、俺は、自分自身にモンスターに襲われない特性があるのではという仮説を立てた。
コンビニを離れた時点ではまだ仮設の段階であり、モンスターに襲われるのではという不安もあったが、今では完全に恐怖心はなくなった。
襲われなかったのだ。
帰路の途中、何度も何度もモンスターに遭遇したにも関わらず。
「なんでなんだろうなぁ…」
どうして自分だけがモンスターに襲われないのかはわからない。
ひょっとすると彼らは俺を、同じモンスターとして…仲間として認識していたりするのではないか?
そんなことも考えてしまう。
だが、俺と他の人間に何か違いがあるとは思えない。
原因は未だ謎だ。
これから俺はずっとモンスターに襲われないままなのだろうか。
それともある日を境に、他の人間と同様敵とみなされ、襲い掛かられたりするのだろうか?
「わからん…けど、襲われないうちに、出来ることはやっておくべきだよな…」
俺はこのモンスターに襲われないという特性があるうちに、生き残るための策をできるだけ打っておく必要があるだろうと考えていた。
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