第4話


「…っ!?なんだ…っ!?」


突如響いた巨大な咆哮。


ガラスがビリビリと震え、俺は思わず被った毛布を投げ捨てて窓の外を見る。


さっと、周囲一帯に影が刺した。


「雲、か…?」


雲によって太陽が遮られたのか、と。


そう思ったが、影の動きは異常に早かった。


すぐに家の上空を通り過ぎ…そして前方に向かって進んでいく。


俺は窓から顔を出して、上空を見上げた。


「あっ…!」


そして絶句する。


ドラゴン。


そうとしか表現できない怪物が、上空を飛び回っていた。


「あ……」


あまりの光景に、俺は唖然としてしまう。


ゴシゴシと目を擦ってみるが、錯覚などではなかった。


『グオオオオオオオオ!!!!』


再度の咆哮。


ビリビリと周囲の空気が震え、地上からは人々の悲鳴が上がる。


もはや現実逃避をできる状況じゃなかった。


「嘘だろ…」


俺は、認めなければならないようだ。


地上に、モンスターが出現したことを。



「まずい…早く避難しないと…」


モンスターが地上に出現した。


そうはっきりと認識してから、俺が行動を起こすまでにそう時間は掛からなかった。


もはや呑気に部屋に引きこもっていられる状況でもなく、俺は急いで二階の自室をでて階下にあるリビングへと降りる。


「父さん、母さん…!」


両親を探すが、見当たらない。


おかしい。


いつもこの時間帯はまだ家にいて、仕事に行く支度をしているはずなのに…


「なんだよこんな時に…どこかに行ってるのか…?くそ…」


なんて悪態をついている場合じゃない。


俺はさっさとここから逃げ出すために、ひとまず必要になるものをリュックに詰め込むことにした。


「あった…!」


旅行に行く時用の大きめのリュックを押し入れから引っ張り出し、冷蔵庫にある食料を詰め込もうとする。


そして気づいた。


「え…食料が…ない?」


そう。


冷蔵庫の中に食料が一切なくなっていたのだ。


「なんだこれ…盗まれたのか…?いや、そんなはずは…」


泥棒が入ったのかと思ったが、別にリビングには荒らされた形跡はない。


となると…


「まさか…二人が持ち去った、とか…?」


両親に見捨てられたのでは?


そんな悪い想像が頭に浮かぶ。


「いやいや、まさか…」


ないない、と首を振るが俺には確信が持てなかった。


気づいていた。


だいぶ前から、部屋に引きこもってゲームばかりしている俺に向ける両親の視線が、冷めて乾いたものになっていたことに。


「俺を見捨てて…二人で逃げたのか…?」


あり得る。


最近の二人の俺をみる目は、明らかに息子を見る目じゃなかった。


言外に、お前は家の子じゃない。


そう言われているような目だった。


「まじか…」


俺はボトッと空のリュックを取り落とし、当然としてしまう。


両親に見捨てられた俺は…これからどうしていけばいいんだ?


『キャンッ!!キャンキャンッ!?』


そんな時だった。


「…っ!?」


家の外から犬の悲鳴のような鳴き声が聞こえてきた。



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