第3話


叫び声をあげながら逃げ惑うサラリーマンは、そのままゴブリンに追いかけられて姿を消した。


俺はサラリーマンが消えていった角を眺めながらしばらく呆然としてしまう。


が、やがてはっと我に帰ってぱしぱしと頬を叩いた。


「忘れよう…きっと目の錯覚だ…」


頭では錯覚などではないと理解していても、俺にはあの光景が現実のものだとは到底受け入れられなかった。


きっとゲームのやりすぎで、犬か何かがゴブリンに見えたのかもしれない。


そう言い聞かせて俺は毛布を頭からかぶる。


きゃぁああああああ……


いやぁああああああ……


ピーポーピーポー……


「…」


だが、どれだけ時間が経っても周囲から聞こえてくる悲鳴やサイレンの音が鳴り止むことはなかった。


もしかしたら先程のサラリーマンのように町中で人々がさっき見たゴブリンみたいな醜悪な生物に襲われているのでは、なんて考えが俺の頭の中に浮かぶ。


「まさかな…漫画じゃ無いんだから…」


最近ネット漫画に、『現代日本にモンスターが現れた!』なんて内容の作品が増えており、俺もいくつかを読んだことがあるが、あれはあくまでフィクションであり、作り話だ。


異形のモンスターたちが地上に溢れるなんて、そんなこと絶対に起こり得ない。


あり得るはずがないんだ。


「寝よう…寝たらきっと全部丸く治ってるだろ…」


俺は現実逃避するように寝転がって瞼を閉じた。


その時だった。


『グオォオオオオオオオ!!!!!』


「…っ!?」


周囲を蹂躙するような巨大な咆哮が響き渡った。




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