第29話 探ってみることにしました 2
「……よし」
家に帰ってきた俺は早速そのグループチャットを覗――かずに『ステータス』を開いて『スキル一覧』を閲覧した。
あのチャットに催眠効果がある魔法がかけられているのは分かっている。
だったら今の内に何かしら対抗手段を用意しておくべきだろう。
「さて、どれがアタリかな……」
表示されたスキルの数は膨大で、しかもその効果は実際に習得するまで分からない。
とはいえ今はスキルポイントが有り余っている。
だからここは直感を信じて「これだ」と思ったものを習得することにしよう。
「お、これなんか良さそうだな」
目についたのは『ディスペル』というスキルだった。
スマホでその単語を調べるとゲームなどで解呪や魔法を打ち消す効果をもつものによく使われている名前らしい。
異世界における『ディスペル』の意味がこちらの世界のゲームに登場するものと同じなのかは分からないが、違ったら違ったでその時に考えるとしよう。
あとは……、この『マジックカウンター』とやらも念のために習得しておくか。
そんな軽い気持ちで俺は『スキル習得』をタップする。
「『鑑定』」
―――
対象:ディスペル
効果:発動、または発動中の魔法・能力を無効化する。
状態:スキルレベル1/10
補足:
―――
幸運にも『ディスペル』の鑑定結果は俺が望んでいた通りのものだった。いやまあ実際に使ってみたら期待はずれだったという可能性が残っているのだが。
しかし。
「こっちは使い物にならなそうだな……」
―――
対象:マジックカウンター
効果:相手が放った魔法を任意の対象にはね返すことができる。
状態:スキルレベル1/10
補足:
―――
試しにと取ってみたものだが、恐らくこれは今回使わないだろう。
さて、まずはこの『ディスペル』がどういったものなのかを確かめないとな。
まず俺は『水魔法』で手のひらに小さな水珠を出現させると、それに向かって『ディスペル』を発動する。
すると水珠は最初から何もなかったかのように霧散してしまった。
続いて俺はステータスを確認して、どれだけMPが消費したかを確認する。
―――
伊織修 Lv113 人間
称号【名を冠する者を撃破せし者】
HP32500/32500
MP825/860
SP730
STR135
VIT140
DEX130
AGI150
INT145
エクストラスキル スキル貸与
スキル 鑑定 万能翻訳 空間転移魔法 認識阻害魔法 アイテムボックス 氷結魔法 治癒魔法 風魔法 水魔法 追跡・探知魔法
身体強化 身体強化(中) ディスペル マジックカウンター
―――
『鑑定』で10、『水魔法』で5消費していたから、『ディスペル』の必要MPは20といったところか。
なら次は。
「……ふっ」
今度はMPを50ほど使って巨大な水珠を出現させると、それに対して『ディスペル』を発動する。
俺の『ディスペル』のスキルレベルはまだたったの1だ。もしかすると規模が大きい魔法は無効できないかもしれない。
それを確認するための検証だったが。
「……消えたな」
巨大な水珠は先ほどと同じようにあっさりと霧散する。
ということはこの『ディスペル』はスキルレベル1の段階でどんな魔法や能力も無効化できるのか。
ならスキルレベルを上げることで一体何が出来るようになるんだ?
「……こっちも確かめてみるか」
次に氷結魔法で小さな氷のボールを生成すると、それを風魔法で生成した小さな竜巻で浮かしてみる。
「『ディスペル』」
そして『ディスペル』を発動すると、氷のボールだけが消失して竜巻だけが残った。
「……」
もう一度同じようにスキルを発動させると、俺は竜巻の方へと意識を向けながら『ディスペル』を発動してみる。
すると今度は竜巻だけが消失し、氷のボールはそのまま床に落下した。
なるほど、今のスキルレベルだと同時に無効化できるのは1つまでなのか。
ま、これなら何とかなるだろう。
そう考えて俺はスマホのメッセージアプリを開くと、噂のグループチャットを恐る恐るタップする。
そして画面が指に触れたその瞬間、画面から紫色の魔方陣のようなものが出現し、そこから甘い香りの煙のようなものが噴き出た。
「『ディスペル』」
それを見て『ディスペル』のスキルを発動させると、噴出した煙は一瞬で消え、魔方陣自体も無色なものへと変わる。
とりあえずこれで『催眠魔術』の罠は何とか回避できた、と思いたい。
さて、次はこの魔方陣についてだな。
「『鑑定』」
―――
対象:催眠魔法
効果:チャットを閲覧した者を自動的にチャットを閲覧しているランダムな異性と交際していると思い込ませ、定期的に最寄りの『自動回収』と『記憶想起』の魔方陣がかけられた物品が設置された場所へ向かうように促す。
状態:スキルレベル6/10
補足:発動者は指定暴力団「山藤会」会長の永本進。
魔法の触媒には牛鬼の遺骸の一部が使われている。
―――
……山藤会、確か昨日のヤクザたちが所属していた暴力団がここだったはずだ。
そしてこの鑑定結果を見るにあのガラス瓶と似たようなものが複数あるようだな。
『プルルル』
そんな風に推察していると、久遠から着信が入る。
「もしもし?」
「突然すみません、久遠です。昨日のことについて少しお話したいことがありまして……今大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。それで話したいことって」
「……その、昨日のことについて調べたいと思いまして。ご協力していただけないでしょうか?」
また凄いタイミングに電話をかけてきたな、と思いながら口を開く。
「いいよ。と言ってももう粗方調べ終えたけど」
「はあ……はあ!?」
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