物語の終わりと始まり―流れゆく季節、二人三脚、苦味
それからの話。
季節は夏から秋に。最近は気温が下がり、
ミケツさんの散歩の時、
「あァん?ワシの正装は全裸じゃ!!服など邪道!!」と全力で拒否されてしまった。
「なんだよ、寒くないのかい?」と目の前の落ち葉が落ちる道をチャカチャカ歩くミケツさんに言う。
「べっつにぃ」とかの神の
散歩コースは昔、
「あーあ。今年でお気楽バイト生活は終わりかあ」と僕はごちる。そろそろ将来に向け、次の一手を打たねばならないのだ。
「ま、
「いやあ。実家はさあ。面倒だし、でも宗像で1人腐ってるのもなんだし…リハビリがてら長田さんの世話になる事にするさ」と。
同居を始めた僕ら。
同居人としての彼女は―いたって普通。家事も出来るし、面倒なタイプでもない。
ただ。
「君にはでっかい借りがあるからさ、何かさせてよ。あたしにさ」と言った。
「んー別になあ。部屋のそうじとか頼んじゃってるし」
「そー言う話じゃないって」と彼女は言う。
「何?何か困りごとを相談せいと?」
「そそ。18の乙女だ、色々あんだろい?」
「いやあ…将来どうしよっかなあとは思うけどさあ」と僕は困りながら返答する。
「えっと…いおりちゃんは高校中退…だよねえ」
「ん?まあそうだね」
「大学なり専門なり行きたいのかい?」
「まあ…働いても良いけどさ」
「いやいや…辞めとけって…
「
「あのさ。中学の
「そんなもん?」
「うん。こっちのリハビリに付きあうと思って―教えさせてくれんかい?」と和美さんは頼みこむ。
「じゃあ…来年あたりから頼んでもいい?今年一杯は気楽な身で居たいし…辞めた高校にも連絡取ったりせんといかんし」
「ん。じゃ、頼んだぜ?いおりちゃん」
「こちらこそ…頼みます。あ、ついでに僕、そんな頭良くないですから」
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季節はさらに流れていく。
スタッフも―メンバーが去った。
さて。僕と
僕らは2人3脚で高認と大学受験に取り組んだ。一応バイトも続けてたけどね。
和さんは受験に
「私立文系1本狙いだ。別にいおりちゃん家、貧乏でもないしょ?」
「まあ、絞った方が安全か…」
んで。僕は―高認をパスし、大学にも受かってしまった。大学は柿原さんの母校にしようかと思って居たのだが―好きな作家が講座を持っている、という一点だけで京都の大学を選んだ。
「結局コッチ来るんかい!!」と父はツッコミを入れていた。
そう言えば―みなさん覚えているかどうか分からないが―スマホの借金。母への借りなのだけど―
「入学祝いに…利息と残金はチャラにしてあげる」と言われた。ケチな彼女から出た最大のお祝いである。
僕を指導し終えた和さんは、予備校講師の職を見つけてきていて。僕と同時に卒寮するみたい。
「ま、フリーランスで適当にやるさ、しばらくは父さんに助けてもらうけどさ」
ああ。ミケツさんの話をしておこう。いや、別に変わりはないんだけどね。京都にも連れていくしさ。
「ウカノカミ様から、いおっちゃんに伝言だ」と犬ベットでゴロンゴロンしている彼は言う。
「ん?もしかして―あん時の借りの話かな?」
「おう、それだ」
「お
「タダだって」あっけらかんと言う彼。
「は?」そんなうまい話になったのか?
「お前、京都で
「まあ、ねえ」これは―面倒な方向に話が転がりだしてる。
「仕事、手伝えってさァ」
「んげ。また神とかそんなのに関わらんとならんの?」正直面倒くさい。今度こそ死にかねん。
「お前は―もう半分、専門家みたいなモンやないか…神とかそんなんの」とミケツさんは僕を見やりながら言う。
「まあ…ね?実際の事によるけど、まあ、なんとか出来る…かも?」
「ま、俺も手伝ってやっからさァ…やろうや!!儲かるでェ?」ミケツさんは和牛のヒレを食べて以来、カネの
「ま、勉強の片手間にね?学生の本分は学習なり」僕は文学部日本文学科に進んだ。元から本は好きだし、この学部なら神話も少し触れるからだ。
「ま、向こう行ったら
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卒寮パーティには懐かしい僕の同期メンバーが集まっている。
「久々に
「やっと―
「無理すなよお?」と和さんは言う。
「初めての飲酒ねえ…ウコン
「いーや。最初は失敗しとくべきでない?」と橋本さんが
「誰が始末つけんだっての」と古河さんはクールに言う。
「和さん居るから良くね?」と賀集さんは何気なく言う。
「ま。始めようではないか…諸君」と石田さんが号令をかける―
キッチンから現れたのは柿原さん。今回の料理を作ってくれたのは彼だ。仕事終わりに申し訳ない。
「いや、コレ、仕事だぜ?」と彼は言う。
「友悟…ケチなのよ。共生組合に請求書送ってきたもの」と安藤さんは不服そうに言ってる。
「まあ、友達価格でやってもらったけど」とのっそり現れた長田さんは言う。
「ほんと、アンタは
その間―共生組合のマスコット的存在を勤めていたミケツさんはリビングをチャカチャカ歩き回っていたのだが―
「ワシの飯は―なあ、長田!!何か頼んでへんのか?」―「アオウ…バウバウ…」と絡んでいる。みんなの前で長田さんに絡むんじゃない。
長田さんはミケツさんの前にしゃがむと―撫でながらこういう。
「ゴメン、忘れてたよミケツさん」と。周りは不思議そうに見ている…まったくもう。
「おおおォン…
「ミケツー?」とそこに久井さんが入ってくる。
「アオン?」とミケツさんは
「売れ残りの
「さって…じゃ、いおり君と
「乾杯!!」
僕は、生まれて初めてのお酒を口に
その味は―
「お?何か複雑な顔してんな?いおり君」と久井さん。
「なんだろう―大人になるって…苦味を知る事なのかも、って思ったんだ、コレ飲んだら」
「ん?いやそれ甘口やで?そんなになん?」と久井さんは言う。
「久井さんは酒の呑み過ぎで味覚がアレだから分からんかもだけど―苦い」と僕は
これから。
何が起こっていき、どんな人生を僕は歩むだろう?
それは―まあ、分からない。
でも、このワインみたいに苦味が利いた人生ではあると思う。そんなに甘く出来てない。
ただ。
僕には多くの友が居る。だから、辛くなったら、何時でも彼らに頼るのだ。重たい荷物もみんなで持てば何とやら。
その内、強くなったら、誰かに手を貸そう。
何時か自分がしてもらったように。
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