ヘビィな話を3つほど。
ほうほうの体で座り込んだ僕に外に出て風に当たったら?と勧めてくれたのは
「少し冷えるかも知れないけど…スッキリすると思う」そういう彼女の
勧められるがまま外―ベランダだ―に出てきた僕。外の空気はカラッと冷たい。
空を見上げれば
ああ。
このままでは―無の中に自分が消えていく。選ばれなかった可能性達のように。
誰か―助けて欲しい。
無になる。それは一体どんな心地がするんだろう?無になったらこんな情けない自分から解放されるのだろうか?まるで母が信じている教えみたいな事を考えてしまう。
そんな、幻覚の中に沈み込んでいる僕を現実に引き戻したのは、二筋の
「大丈夫か?いおり君?」へたりこんで地べたに座り込んだ僕の顔を
「―っはあ…」と僕は久々に呼吸するみたいに、周りの空気を吸い込む。
「あんまり戻って来ねーから煙草吸いがてら様子見に来た…余計なお世話だったか?」と柿原さんは優しく言う。
「…いや。助かりました」と僕は
「にしたって女の子座りはどーなのさ」と
「いやー済まんな。無理させたみたいで…お前がそこまでのシャイボーイだとは思わなんだ。イチイチで話すのは出来てたからさ」
「人前で話すのはそれとは違うっしょ、柿原さん」と呆れ声の久井さんは言う。
「なんか、そーいう感覚忘れてたな。重ねて配慮が足りなかった事、謝るわ」
「いえ…僕が悪いんです。ただの自己紹介なのに」
「ホント、柿原さん、フツーの人になっちまってんだな。昔は俺らと一緒だった癖に」と皮肉めいた声色の久井さんは言う。柿原さんが僕らと同じ?この明るさ100%の人が?
「あー俺、大学受験シクってさ、浪人してたんだけど―それが他人より長かったんだわ」
「通称、
「…何年位の間、そうだったんですか?」と柿原さんに尋ねる。
「ん?18から24までかな?6年くらい?
「どうやって―戻って来たんですか?ここに」
「戻ってきた…って言い方は引っかかるが―ま、俺も長田さんと安藤さんとココの世話になった訳よ。寮生活はしなかったけどな?」
「青年柿原は大学の社会学部に進んで卒業し―カムバックしてきた訳よ。で、俺たちのケツ叩きとして雇われた。ま、就活シクった結果だよな?」と久井さんは言う。
「違ぇよ、馬鹿」と柿原さんは言う。
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「俺の過去をほじくり返したんだ、お前のも宇賀神少年に
「俺の話?あんま面白くはないと思うけどなーどうしよっかなー」彼の事を、彼が人と関われるようになったきっかけを聞くなら今しかないような気がした。だから僕は言う。
「是非、聞かせてください…どうやって浮かんできたか」
「頼まれちゃしかたないなーでも、愉快な話でもないぜ?」
「ま。コイツはコイツなりにヘビィな話だからなあ」と柿原さん。心配の色が混ざっている。
「コレ、聞いたら宇賀神君、俺の事嫌うぜ?
「聞いてから…嫌うかどうか決めます」と僕は
「まーアレか、隠したまま
「お願いします」
「ただ、あんまりネットリ語るのも趣味じゃない、要点だけ言う、さっき自己紹介の時、イライラしたら物に当たるって俺、言ったよな?」
「ええ…実家の部屋は凄いことになってるって…」
「それがさ―
「親を殴った…」と僕は合いの手を入れる。続きを
「最初は兄貴とオヤジだったな。学校も行かずにゲームばっかしてる俺を2人揃ってシバきに来たんだ」
「その言い方だと―暴力を受けていた側ですが?」
「向こうも最初はそのつもりだったんだろうよ…この通り体格はそこまで良くない、お
「…やり返したんですか?」
「そう。最初は黙って殴られてた。口の中が鉄の味がしてさ…ま、歯が折れなかっただけ、マシだけど…あんまり殴られてるとさ、イラッとくんじゃん?人間だから」
「まあ、何クソ、と思うかも…」
「ちっとばかし、反撃したんだよな。隙を見て。気が付いたら2人とも倒れてたよ」そういう彼の顔は歪む。僕は自分のエゴの為に他人の認めたくない過去を掘り返している。そう思うと胸が苦しくなる。
「アレ見た時、ああ、
「話がココで終わるなら親子喧嘩…ですよね?」僕は半ば
「ま、済まなかったんだよ」と彼は言う。
「…久井、俺が促しといて何だが…終わりにしとくか?コレ」と柿原さんがフォローを入れる。
「ん?もうオチまで言うよ、俺はやってしまった事を言葉にして背負って生きていくって決めた。初対面のヤツでも話す。嫌われてもいい」と寂しげに言う久井さん。
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アレは―オヤジ達をシバいて3日後の昼下がり。
珍しく仕事が無かったオカンが俺の部屋の戸を叩いた時に起こっちまった。
最初は俺に優しい言葉をかけてきた母…やがて思い出すような感じで言ったんだ。
「
その言葉が―
気が付けば―
母に馬乗りになり、首を絞めてる俺がいた。俺を正気に戻したのは―
「良いの、私を殺しなさい。そして―お父さんとお兄ちゃんも殺しなさい…」
その言葉を聞いた瞬間、俺の両の手の平の力が抜けた。オカンの首に視線が落ちる―そこには真っ赤になった、俺の手の跡。危うく―俺は人殺しになっちまうところだった…
その後、俺は実家を追い出された。父方の実家に預けられたんだ。最初は抵抗したが、母親の首を絞め、
俺の実家は大阪の南部。
家族は結局…俺がヤラかした事を隠した。
そして―あの佐賀の座敷で何もせず過ごしていた俺のもとに、長田さんが現れ―
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「今に至る」と彼は思い出話にピリオドをうつ。
「お疲れさん、久井、済まん」と柿原さんが僕が言う前にお礼を言う。
「正直…貴方をどう、思えばいいのか―分からなくなりました」と僕は言う。それがとっさに出た言葉だった。
「逆の立場ならドン引くね」と久井さんは哀しい笑顔で言う。
「でも…僕は、何も知らないから。貴方の家族の事は」せめてもの言葉。
「殺しかけといて、ってのを脇に置くなら。まあ、いいヤツらだよ、彼らは。ただ―俺をどうにかしようとした時、俺はそれを理解せず、怒りに身を任せ、罪を犯した…コイツと一生付き合いながら生きていく他無い」
「あなたは…正直ですね…黙っていれば、僕を騙せたかもしれないのに」
「だが―それを
「何にせよ―ありがとうございました」と僕は頭を下げ、お礼を言う。
「へ?別に何もしてねーって、俺は
「僕は―」と言葉を出す。何か気の利いたことを言って彼を慰められれば、と一瞬迷ったけど、正直者の彼にそんな嘘は安い。彼の見せた誠意―それが自らの為から出たものでも―に対して、こう言った。
「神様じゃないから裁きません…過ぎた事だけで貴方を判断しない。これから付き合っていく中で嫌うかどうか、決めます」
「嫌ってくれた方が楽なんだけど…」と辛そうな彼が応える。
「久井、受け取っとけよ、その言葉。な?
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三人でベランダから戻る。心配そうな顔をした長田さんの顔。柿原さんはそれに向かって親指を立て、続けて、
「さ、鍋も
「な?似合わないよなあ。この
「柿原くん…それ、ココアパウダー使ったの?それともチョコレート?」と安藤さんは柿原さんに聞いている。甘いものが好きなのだろうか?
「ん?板チョコ
「ふむ…ならウィスキーと合いそう。と言う訳で久井君、頼まれてくれる?」
「悪いけど、アイラモルトしかないぜ?今」と久井さんは申し訳なさそうに言う。
「…あの
「あの
柿原さんの作ったガトーショコラには粉砂糖が丁寧に振るわれていて。まるで雪が積もっているみたいだった。何というか―こういう細かい事にこだわりそうにない彼が作ったとは思えない。
「なーに目を丸くして俺の顔見てんだ?いおり君?」と柿原さんが言う。
「いや…似合わないって思われているんだろ…」と早速ケーキをモグモグ食べている長田さんが言う。
「柿原君はココで一番料理上手いわよね…昔はインスタント食品とカップラーメンばっか食べてた癖に」と安藤さんは
「柿原さん、料理が上手くなったのは最近の事なんですか?」と僕は聞いてみる。
「まあ…料理を始めたのは大学に入ってからだな…実家出たからさ。でも今ほどは作ってなかったし、食わせる相手が居なかったから、あんま上達はしなかった」
「今は…ああ、ここの寮の夕食を作っているから、上達したんすね」
「そ。独学ってのは成長に限界がある。教師が居なくても披露する機会、批評される機会があると、技術は伸びるな」
「ココの寮生たちは案外グルメにうるさいの…」と安藤さんはしみじみ言う。
「
「アレな。いやな?俺が用事で夕飯作れない時に安藤さんに代行してもらったんだが―まあ、
「ビーフシチュー…」
「あの味のしない、野菜に火が入ってないビーフシチューは悪夢だったわ、安姉さんには悪いけど…」味がしないビーフシチュー…ううん、確かに悪夢なのかも知れない。
「出来あいのデミグラスソース缶使っとけば確実にコケない料理のはずなのになあ」と柿原さんは言う。
「…そんな手があったの?」と不思議そうに安藤さんは言う。
「作る前にレシピ見なかったんですか?」と柿原さんは問う。
「ほら…私、細かい事気にしないから」とあっけらかんと言い切る安藤さん。
「俺…安姉さんがメシ作ってるトコ…見たけど、何も見てなかったな…作り慣れてるものかと思ったわ」と久井さんは思い出したように言う。
「そら、あーなるな…安藤さん、もう夕食当番二度と空けませんわ…寮生に殺される」と柿原さんは諦めたように言う。
「柿原くん、あたしに料理を教えてもいいのよ?」と安藤さんは絡む。
「いや、あんた人の話聞かないじゃん。ぜってー教えたくない」と柿原さんは答える。
「それに―」話をふんふん聞いていた長田さんは続けて言う、
「彼女をキッチンに入れると、確実に呑むね…キッチンドリンカーは勘弁してくれ」とため息交じりに言う。ここまでの彼女を見ていて何となく思っていた事が確信に変わる。
「そ、安姉さんはココ一番の酒豪。通称、ザルの瑞希。大学時代は寄ってきた男を
「肝臓…お大事にして下さいね?」と僕は安藤さんに言う。
「大丈夫。ウチの家系は肝臓強いから」と安藤さんは何故か得意げにそう言った。
柿原さん
柿原さんと久井さんはまたベランダに煙草に行き、安藤さんは隅の方でグラスを傾ける。長田さんは僕以外の参加者さんとしゃべっている。僕はガトーショコラのお皿をシンクに下げ、ついでに洗ってしまう。
カランから
「ゴメンね…後片付けしてもらっちゃって」
「いや、ちょうど手持無沙汰だったんで」と僕は言う。
「ホントは柿原くんが号令をかけて皆で後片付けするべきなんだけど。彼、ニコチンホリックだから」
「いえ、大したことはしてませんよ?」僕は
「いや、よく気が回るほうなんじゃない?」
「…でもないです」そう、こういうのは習慣として身についているだけで。特別僕は気が回る方ではない。じゃなきゃ不登校なんてしてないはずで。
「そうかい?ねえ、1つ聞いてもいいだろうか?」と背中越しに長田さんが言う。
「どうぞ」と表情を
「君には兄弟はいるのかな?」
「いえ…一人っ子です」と僕は言う。何故、今ここで兄弟構成を聞かれるのだろう?
「そうか…オーケー。ありがとう」と長田さんは何かに納得したような声色で言う。
「どういたしまして」と僕は良く分からないながらも長田さんに返す。
「…そうだ、忘れるところだったけど、今日、この会の終わり―17時だけど―以降時間あるかな?」まあ、家に帰ったところで母と出くわすだけだ。
皿を洗い終えると、戻ってきた柿原さんと久井さんが謝って来た。特に気にするような事じゃないけど。
「な、いおり君?今日会が終わった後、暇か?」と謝った後で柿原さんに言われる。
「いや―実は先約がありまして」と僕は答える。
「ああ、
「あ、分かります?」
「まあ、そうなるかも、って俺らも思ってたし」と柿原さんは言う。そして。長田さんの話が終わったら久井さんを含めた3人で夕飯にでも、と誘うのだった。
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長田さんは僕を応接室に案内する。中は6畳ほどの洋室。ソファが一対とテーブルの応接セットがちょこなんと中央にある。壁際の一辺にはローテーブルが沿わせてあり、その上にノートPCが2、3台。
「ここさ、応接室兼寮生のPCルームなんだよ、寮の部屋にはネット回線を繋いでないからさ」
「といっても現代なんでスマホはある訳で」
「確かにそう。でも、部屋にネット引いて、PC持ち込ませると―マジで出てこなくなるからね…」まあ、昔のネットゲー全盛期には
「さて。本題だ」と長田さんは続けて言う。
「ええ。どうされました?」
「君―いや…こっちから始めるべきなのかな…」と長田さんは迷っている。多分―彼の
「僕―の性別の事ですか?」と僕は
「うん。それ。正確には
「まあ、
「少年みたいな感じですけど…」大きくならなかった
「僕は最初、君は性に関して混乱があるのかと思った…ま、どっちか分かったのはついさっきだ」
「…よく言われます。オンナっぽくないって」そう。だから僕は意図して自分を曖昧にした。ファッションも中学生の頃からアウトドアアパレル
「ま、そんな事は
「まあ…名前がいおり、ですからね。ある種の虐待を想起させてしまったのかも知れませんね」と僕は言う。そう。いおりと言う名前は詳しい人なら分かるのだ、男性につく事が多い名前なのだと。
「そう…家の中で何か―男の子―の代わりをさせられているのかと―まあ、妄想してしまってね」
「ありがちなドラマ」
「そ。テレビばっか見てたからね、そういう下世話な想像力が
「性に関しては―特に問題ないというか、まあ、多分、成人するまでにオンナの子になると思います」と僕は言う。
「ん。じゃ、そこは僕は手を貸さない」と彼はあっさり言う。
「そこは?」と僕は彼の言葉を引き取り、言う。
「家の中で…過ごしにくい、後、社会参加をしてないって部分に関しては手を貸せると思うんだ」家の事、話したっけ?
「ああ、ゴメン。安藤君から聞いてしまった」
「いえ、いいんです」
「
「ええ、つい癖で」
「その姿を見て、僕は君の性を確信した。まあ、古いモノの見方で申し訳ないけど。それはさておき」昔の価値観的にはオンナの子の方がそういう家事仕事を率先してやる、って事だろう。続いた、『さておき』の方が妙に気になる。
「ねえ、いおり…」
「くんでお願いします、そのほうが慣れてるので」と僕は言っておく。
「じゃ、いおり君。君はヤングケアラーという言葉を知っているかな?」 ※
「いえ、
「ま、明確な定義がある訳ではないが―家庭の中で本来、大人が
「うん。君が言いたい事は分かる、別に両親の世話を焼いていた訳ではないんだろ?」
「ええ…共働きの家庭でしたので、どうしても行き届かない部分が出てくる。それが気になってしょうがないから、たまに家事はしてましたけど、両親共に自立しているというか…まあ、手のかからない人達なんです、まあ、今は父とは同居してませんが」
「うんうん…でね、僕が言いたいのは、君が両親の仲立ちとして、本来、大人が努力すべき事を自然とし続けてきたんじゃないか?って事なんだよ。メンタル的なヤングケアラーとでも言うのかな…」
「僕の存在が―あの夫婦を保っていた、と?」
「『子はかすがい』、とはよく言ったものだよね?」と長田さんは言う。
「でも―僕はその『ケア』を全うできなかった…」と僕は言葉を絞り出す。
「ご両親の事…突っ込んで聞いてもいいかい?」長田さんは優しく言う。このまま吐き出した方が楽なのかも知れない。
「…お母さんがある教えに
「崩壊した…ゴメン。言い方が悪かっただろうか?」
「いや、文字通り空中分解しました。父は元から母と冷めきっていて。教えに傾倒する母を見限ったんです。僕の存在があったというのに。そして新しく女の人と知り合って…」
「出て行ってしまった…酷いもんだ」と長田さんは怒る。静かな声に怒気を
「でも、僕はどっちかって言えばお父さんっ子だったみたいで、その事に対して怒れないんです。むしろ、開放されて良かった、って思うんです…」
「…まったく、大人が考え、すべき事を子どもが担う。悲劇だ」
「両親が離婚した時、僕の親権をめぐって2人は争いました」
「ただ―日本では母親が親権を取得することが多い」
「ええ。母もキャリアウーマンですから。あの教えに傾倒している事を差し置いて僕を手元に残した」
「君には選べなかった事…だったんだな?」
「正直―どうでもよくなっていたのかも。それが間違いだったって最近思いますけど」
「君はもう18だ…意志を持てば家から出れる」
「でも…不登校になっちゃってて…先行きがない」
「まあ、負担がかかり続けてきたんだ、無理もない…友達は居なかったのかい?」
「昔から転校続きで…ここも母の都合で来ただけで縁も
「辛かっただろう?」
「目を背けることで必死でした…」両親が離婚してからの記憶はあやふやだ。当時住んでいた栃木を離れ福岡に来たけど、ぼうっとしてしまっていて。全然覚えてないのだ。
「さて…辛い話はこれ位にして。僕が君に手を貸せるって話をする」
「お願いします…」
「端的に言えば―ウチの寮生になってはどうだろう?まあ…金銭の事があるから両親のどちらかに話を通さなくてはならないけど、まあ、そこは僕が上手い事やるつもりだ。性別の事は―部屋に関しては2LDKの部屋が空いてるから大丈夫、そこに1人で入ってもらう…で、どうだろう?まず、君はオーケーかい?」
「そのような配慮を頂けるなら、大丈夫です…両親は任せますけど」
「任せてくれ。ただ―まあ、交渉次第では君に条件が課されるとは思う。先の話になるが」
「条件?」
「寮に入るにあたって目標を定めてもらう。ただ漫然と過ごさせるってだけでは―ま、引きこもりじゃなくなるだけでも万々歳だが―僕もタフな交渉を進められない」
「考えておきます」と僕は返事をする。
「じゃ、今日はここまで。悪いけど―母親に声をかけるのだけは頑張ってくれ。そして僕の連絡先を渡して。後は何とかするから」
↑本文、了
※ 「ヤングケアラー」と言う語を使うにあたって、以下のサイトを参考にしました。
「ヤングケアラーについて」
@厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html 2021年12月7日閲覧
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