オレのコウチョー日誌@最強教師陣揃えたった

@Aries_K

1限 入学式はショベらない

「くぅぅ!ついに完成したぜ!!

これぞ俺の目指した夢!!」

両手を広げ、校庭の中心に立つのは御年35歳の工藤 阿久磨

(くどう あっくまん)。

漫画好きの両親がつけた、この世の中で最高にだっせえキラキラネームさ。


「このために、いったいどれほどの汗水を垂らしたことか・・・」

この男、手汗で絶賛びっちゃびちゃである。

「好きでもない建築の肉体労働をやり、またある時は塾で教鞭をふるう!」

「休みの日には、うるせぇパチンコ屋のバイトもしたし、ベビーシッターもやった」

「空き時間には、買い切りの小説・漫画をちょっとずつ描き、それなりに金になった!!」

「時には、嫌いな金持ちヤロウの家に訪問して、融資してもらうよう何回も懇願した・・・」

「だが、それも今日で終わりだ!!これからはこの学校の王様(校長)になり、地域の人にチヤホヤされながら不労所得で稼ぐんだ!!!」

[節制・節約・学校建築」が太文字で書かれたハチマキは、額や背中に滴るぐしょぐしょの汗によって、外れる。


この日、阿久磨は「私立 究極(別名:アルティメット)中学校」の校長先生となったのだった。







第1話 入学式ではしょべってはいけません


 究極中学の体育館。生徒と保護者がパイプ椅子で隣り合わせに座っている。

体育館の二階通路の窓ガラスからは、温かい日差しが入る。

総勢70人くらいだろう。新設でこの人数は悪くねぇな。

静寂が場を包む。

そして、はじまりの開演ブザーが鳴り響く。


「これから、私立究極中学の第一回入学式をはじめます。

この度、司会進行を務めます。関と申します」

来賓席の最前列にいるオレはどきどきしながら、そして手汗がぽたぽたと垂れる中、入学式へ参加している。

「軽く自己紹介だけさせていただきます。

今年から新卒の教員として、この学校で1年2組を担当します。

担当科目は『音楽』で部活はソフトテニスの顧問です。」

「皆さんとは週一回、音楽の授業で一緒に学習します。楽しく学べることをモットーに全力で頑張りますので、みなさんもいっしょに頑張りましょう!」

 くぅぅう最高だぜ。まったく新卒のわりにしっかりこなすじゃねぇか。

やっぱ俺の審美眼はもってるぜ。

「それでは、第一回私立究極中学の入学式を進行します。プログラムNo.1 校長先生からの挨拶 工藤校長先生 よろしくお願いします。」

「はい!!」

冷静に動揺をさとられないように、返事をする。の前にハンケチでばれないよう汗をふこう。

会長兼校長先生の役割をもつオレは階段へ足を進め、まずはおじぎだ。

んで、このすごそうな台の上に置いてあるマイクで話すんだよな。

「えー。この度はご入学おめでとうございます。

今回が我が校初めての入学式というわけでね。大変めでたい出来事だと思います。

皆さんも学校設立1回目の入学式なんて初めてではないでしょうか?

このような記念すべき日に、若さに満ち溢れ、澄んだまなざしを持った君たちに会える日を

先生はとてもうれしく思えます。

あなた達は、ここ究極中学の希望あふれる第一号の生徒です。」

覚えてきたものを必死に頭の中で思い起こす。

「ですので、ぜひこの学校とともに学び、ともに成長していければと思います」

「先生は、この学校の建設を依頼し、いその建設が終わると、涙が止まりませんでした。

そして、入学する皆にどのような生徒になってほしいのかをその日から改めて半年考えていました。」

その校訓はこちらです!

ステージ上のカーテンがばっと開く。校訓隠すためだけにオプションでつけたやつ。500万くらいした。ついでに校訓を考えるために自己啓発本を126冊読んで、イケてそうな人のセミナーにもいっぱい行ったからそれを考えるとまぁざっと1000万くらいか。


【ホープ・ホープ・ホープ 未来を君たちの手で】

大きな声で俺はその校訓を伝える。

くぅぅう!!我ながらまじでシビレルぜ。こいつはたしか栄養ドリンクを4本飲んで2日目の徹夜した日に考えついたんだよな。あの時は泣いた。


「この学校で君たちも希望を常にもち、全力でこの学校で文武両道で励んでほしいと思います」

なんだ?なんかざわざわしてないか?ずっと公開された校訓のほうに視点がいってるような。

「保護者のみなさんも、本日はご足労いただきありがとうございます。

ここまで生徒さんを立派に育ててくれたこと、そして本校を選択して入学させていただいたこと大変うれしく思います。」


「設立して一年目というわけですが、本校は教育・スポーツともに大変優秀な先生が多数いらっしゃいます。たとえば関先生のように若いながらも能力が世界的に評価され、音楽の大学を首席で卒業なさったことは、テレビの一部番組で大きく取り上げていました。

また、世界的な大発明をなさり文化勲章を授与された八場(やば)先生や、世界の陸上やレスリングで名を馳せた力田先生、もう話せばいくらでもでてきます。」

「世界で実際に活躍する先生から直接生きた知識を学べる場所はそうありません。」

「ぜひともこの学校でしか得られないものをスポンジのようにいっぱい吸収してください。

私は科目こそ持ちませんが、皆さんの成長を陰ながら応援させていただきたいと思います。

以上です。」

おっとオレなんかは主役じゃなかったな。

生徒も保護者も眠そうって感じだ。


次はその文化勲章を授与された八場先生です。実は本学の教頭をもっていただいており、本日も忙しい中ですがみんなの顔を見たいという思いで、本日はきていただきました。

みんながびっくりするサプライズがあると伺っております。もしかしたら発明にまつわる話も聞けるかもしれません。ぜひ最前線で活躍する人の考えを学びましょう!!」

まぁもっとも八場先生は、電話してお願いしたら、すぐに許可してくれたが。



「校長先生ありがとうございました。

それでは、プログラムNo.2 教頭先生の八場(やば)先生の挨拶」

続いて彼女はアナウンスする。気のせいか彼女の声色からも少し高揚感を感じるような気がする。

「八場先生、忙しい中お時間いただきありがとうございます。入場のほうをお願いします。

みなさんも、ぜひ拍手をお願いします。」

パチパチパチパチ!

おっと、、やっぱり保護者だろうと生徒だろうと、テレビに出てる人がくると

顔つきが変わるなぁ・・・

オレもいつかこうなりてぇなぁ...


「それでは、八場先生、体育館の出入口よりお願いします」


「はいー!!」

ん?出入口から来ねぇぞ??

なんか声も遠くから聞こえるような・・?



ジジ・・・ジジジジ・・・





ウィー―――――――ン!!!!!!!!!!!!

何かが稼働した音がする。

「うぉぉおおおおおおおお!!」

ばりばりばりばり!!

とつじょ窓ガラスは次々と割れ、二階の手すりつきの通路に飛散する。

窓ガラスがなくなり、曇りなき空をふさぐ黄色い物体。

ショベルカーの極太バケットがまず視界に入り、次にアームが見えた。

バケットが二階の通路に着地し、そのまま動かない。アームがおそらく外につながっているのだろう。だが、そのアームもどうやら普通のより太いような気がする。。

背面に何やら手すり?がついているような気がする。


「Yeah!!Welcome to Ultimate!!君たちにとっておきのサプラーイズ!!

これが私の発明さ!!」

「ショベルカーにエスカレーター!!最高のコラボレーションさ!!君たち驚きだろう??いやぁ最高に良い表情だ!!Yeah!!!」

背後に太陽を携えて、体育館の上通路に立つのは御年52歳のサングラスが絶妙に似合う男

“八場 イッソコレヤス”だった。

「おっと。ここじゃなくてステージまで移動しなきゃか。座標を間違えたな」

八場は、外から何かを受け取って、背中につける。生徒達から目を逸らさず見つめながら。

「グライダー旋回モードGOOOOー―――!!!!」

背中についた白き翼で体育館を自由自在に旋回する。

圧倒的な速度で体育館を旋回する八場、飛びながらなにかに空気を入れている。

「パーフェクト!!活力very good」

膨らませていたもの、それはまさしくバレーボールだった。

旋回していたと思うと、体育館の天井付近までとてつもない速度で上昇する矢場。

そのいきおいで、彼はそのボールを天井に投げ、思いっきりボールがはまってしまった。

「うんうん!ちゃんとはまってくれた!こいつは良い体育館だ!!」

下から見ると、その翼にはロケットエンジンのようなものが搭載されている。

ホバリングしながら、天井を見続ける彼。

と思ったら、急激に加速させステージ台までつっこんでいき、そのまま演台に着く。

ホバリングをやめ、地に着いたことで、場は再び静寂となった。

「ようこそ!!希望にあふれる究極中学へ!!」

「私達とともに素敵なスクールライフを送ろう。私が手となり足となり、みんなに伝えられる限りの知識を送ろう!3年間よろしく!!!!」




生徒・保護者・来賓すべてが唖然となる。人間ほんとうに驚くときは声なんか出ないさ。

オレはヤバい人を先生にしてしまったかもしれない・・・。

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