幕間3

幕間3  我妻 優

 アタシの旦那、つよしのことをつぶやく。

 旦那は表面的には、強くない。確かに、背は高いし、サングラスにトレンチコートなんか羽織って、口髭なんか蓄えると、一見、渋みと貫禄を伴い、ちょっとしたチンピラなら、畏縮するくらいの威圧感はある。でも実態は、人とプライベートで話すこともままならないほどの緊張しいだ。サングラスは、人と話すときに視線を合わさなくても良いようにカモフラージュしているというから、肝っ玉は小さいことがよう分かる。


 よくもまぁ、こんなんで、個人探偵をやってこれたもんだと、不思議に思う。いまや、アタシがおらんと全然成り立たへん。


 アタシは『無敵』の女と言われる。そして、自分自身そうだと思うこともある。自信家だと疎まれることはいくらでもあったが、それでもアタシは信念を持って生き、アタシの判断には確固たる根拠があり、アタシの行動には必ず結果が伴ってきた。アタシの自信は、これらの経験に裏打ちされた、確かな結果の産物なのだ。

 アタシの自信は、これまで強の調査を幾度となく助けてきた、と自負している。


 いまや、そんな『無敵の女』アタシに、どっぷり依存している、どこか頼りない旦那だが、誰にも曲げられない自分の強いを持った男やと思う。


 まず、旦那は、相談者に寄り添おうとする。お人好しと言えばそれまでやけど、探偵である前に、良き相談相手になりたいという気概が窺える。どこかの大手事務所のように、すぐに契約締結にありつこうとしない。旦那は、契約するまでは依頼人ではなく相談者と呼ぶことにこだわっているのも、それが理由だ。


 そして、もう一つ。

 いざというときは、自分の身をなげうってでも、依頼人を護る。これは、探偵というよりは、人間としての本質かも知れないが、アタシは実は旦那のそういったところに惚れ込んだ。その、旦那への愛はいまでも変わらない。


 でも、アタシは、関西弁がキツいし、いまいち旦那にそれが伝わらず、ギクシャクすることもあるけど、アタシにとって旦那は、我妻強しかあり得へんねや。

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