第17話

大学に近づくにつれ、カメラやマイクを持った報道陣の数が多くなっていく。

校門では警備員と教員が必死になってマスコミの侵入を防いでいる。学校に入ろうとする生徒を捕まえては今回連続殺人鬼として逮捕された健人の普段の人柄を聞き出そうと躍起になっている。

それを教員が手で制し、守るようにして生徒を校内へと引き入れる。


連続殺人鬼が実は成人式を迎えたばかりの普通の大学生だったことに世間は衝撃を覚え、連日報道を賑わせていた。視聴率も良いことから少しでも新しい情報を引き出そうと連日マスコミが大学に押し寄せ、対応する教員や警備員にも疲労の色が見えた。


「優菜、大丈夫?」

「ありがとう。大丈夫だよ。」

「まさか健人君が人殺しするなんて…優菜に何も無くて良かったよ。」

「うん…健ちゃんのお母さんが亡くなったのに、こんなこと思うなんて変だけど、ちょっとホッとしてる。」


健ちゃんと私が付き合っていたことは周知の事実なので、顔見知り程度の子は腫れ物を扱うやうに私と接してくるが、仲の良い友人たちは“ 恋人が殺人犯だった悲劇のヒロイン”として優しくしてくれるので大した問題ではない。


ごめんね、健ちゃん。

子供の時から、大して助けてくれもしないのに偉そうにされるの、すごく嫌いだった。

あの時、手を取らなければまたいじめられると思ったから取っただけで、健ちゃんに対する思慕の情などこれっぽっちも持っていなかったのだ。


高校受験をした時も、大学受験をした時も、他のところに行きたくて志望校を必死に隠していたのにどこから知ったのか、それともたまたまなのかは知らないが同じところに行くことになっていた。

なんて邪魔な奴。

どの時でも我が物顔で迎えに来たりするせいで付き合っていると勘違いされるし、放課後友人たちと遊ぶこともままならなかった。

どうしたら縁が切れるのかずっとずっと考えていた。


『優菜はさ、願い玉になんて願うんだよ。』


『秘密♡』


“ 健ちゃんと永遠に縁が切れますように”

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願い玉 古河奈桜 @nao-furukawa

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