第14話

「どういうことなの健人!!」


リビングに母親の怒声が響き渡る。


「さっき大学から電話があって、1月から全然学校に来てないんですがどうしたんですかって…!今まで大学に行くって言ってどこに行ってたの!?」


優菜が死んだと聞いたあの日から大学には行っていなかった。優菜がいない大学に行く意味を見い出せなかったのと、俺にはそれよりもしなければならない使命があったからだ。

そんなことも知らない母親は、俺の言い分も聞かず一方的に怒鳴り散らしてくる。


「いっつもいっつもフラフラフラフラ…ちょっと聞いてるの健人!?何をしてたのかハッキリ言いなさいよ!!」


そうだ、決めた。


「このままだと単位が危ない科目もあるって言われたわよ!留年なんて許しませんからね!!」


最後は


「返事をしなさい!健人!!」


母親だ。






足元には血溜まりと動かなくなった母親がいる。靴下が血を吸って不快な感触になっている。

気付かなかった、自分の母親がこんなに悪い奴だったなんて。


優菜を救うのを邪魔するのは悪い奴


世直しの邪魔するのは悪い奴


だからこいつは悪い奴



「これで10人目だ。」


悪人は床に転がしたままにして、いつものように部屋へ上がりノートに線を引く。

元々の予定とは変わってしまったため、新たに書き直して丁寧に線を引いた。

消した文章は10個目、殺した人数も10人、


「やったよ優菜。これで君は戻ってくる!」


あぁ、今から楽しみだ!待ちきれない!!


寝て起きたらいつもの日常が戻ってくるんだ。朝起きて大学に登校したら優菜がいて。退屈な授業を受けた後には声をかけて一緒に帰るんだ。

なんてことのない日常だけれども俺にとっては何よりも大切な日常。待ち望んだ普通の日々だ。

これからは世直しっていう普通じゃないことも同時にしていかなければいけないが、きっと2人なら大丈夫。なんだって乗り越えていける。

早く明日にならないかとベッドに横になり目を瞑る。


階下が騒がしい。

サイレンが鳴る音もする。

あぁ、うるさい。

早く寝て明日になるのを待っているのに。

どんなに待っても階下が静かになることはない。それどころか、2階に上がってくる足音までする。


「健人さん。貴方を母親殺害の容疑者として事情聴取を行いたいと思います。私たちと一緒に署までご同行願えますか?」


ノックもなしにいきなりそんなことを言うこいつらを、とても無礼だと思った。

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