第12話

「9人目は誰にしようか…。」


いつものようにテレビで悪人が死んだことを確認し、サイトを開いて次のターゲットの目星を付ける。

中々良いペースで世直しは進んでいるのではないだろうか。


サイトを開くと開設当初とは比べ物にならないほど沢山のメッセージが来ていた。

と、いうのもこのサイトに名前が書き込まれた人間は必ず死んでいるのではないかとSNSで話題になったからだ。


実際には全員殺してなどいないのだが、確かに死んでいる者について書いてあることが分かり、かつて流行った“デスノート ”のようなサイトだと色めきだっているのだ。怖いもの見たさで覗きに来てメッセージを残す輩も増えたように思う。

訪問者が増えるということは、悪人を見つけやすくなるので大変ありがたいのだが、関係の無いことまで書き込まれるため、目的の書き込みを見つけるのに一苦労してしまう。

おかげで視力が下がったように思える。


“ 匿名:この掲示板に書くと死ぬってマ!?

匿名:こいつイキっててマジうざい。殺してくれ。

やきそば:それよりこいつだろ。

名無しさん:面白いものが見れると聞いて。

319:この前はありがとうございました!おかげで安心して出社出来ます!

匿名:319さんも助けられた人?国とか警察に行くより断然頼りになるよね。

あんまん:殺しって○○県限定?他もあり?”


「県外か…。」

大学に通う振りをして世直しを行っているため、どうしても夕方頃には家にいないと怪しまれてしまう。

そのため、いつもは県内のみになってしまうのだ。


「でも、場所がバレるとヤバいからそろそろ県外辺りにも行ってみるか…。」

日帰りは難しくとも1泊くらいなら、友人たちの家に泊まると言えばどうとでもなるかもしれない。


“ サラダバー:本っっっっっ当に神!!人間が裁くことのできない罪まで裁いてくれた!!”


「神…?」


その書き込みを見た途端、脳裏にはあの神様が思い出された。


『お前に世直しを頼みたい。』


俺は、神なんかじゃなくって。

ただ愛する人を取り戻したいだけで。

本当の神様はあの球体で。


それだけではない、無数のありがとうの書き込み。

そっか、そうか、世直しとはこういう事だったのか。弱い者が正しく声を上げることの出来ないこの世の中は確かに間違っている。

それを、こうやって正していくのか。


「人の役に立つってこんな気分なんだな。」


少し前まではなんてことの無いただの大学生だった俺。

周りの人間とそれなりに上手くやって楽しく生きていけれればそれで良いと思っていた。

こんな風に困っている人がいたなんて露ほども思いもしなかった。


人の役に立つ喜びを知れたのも

苦しんでいる人がいるって知れたのも

それもこれ全部君のおかげだよ


優菜


『先日××区で女性が倒れているのが発見されました。腹部を刃物で刺された跡があり、○○県の模倣犯と見て警察は調べています。』





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