【資料】シャルル七世が兄の王太子に送った手紙(2)
まず、この手紙がヴェルノンで書かれたことに驚きました。
ヴェルノンはノルマンディーに属してますが、当時はイングランドの支配下なのですよ。
ノルマンディー地域の端とはいえ、敵の勢力下に侵入している!?
のちのシャルル七世12歳、何してんだよwww
フットワーク軽すぎるだろ!!!
「そうか?」
いや、まじで……
なぜ、そんなところに?
「問題ない。アンジュー公と一緒だったし」
私こと筆者が説明しようにも、ややこしくて文章化できなかったのですが。
ふと、いつもの『勝利王の書斎』モードを発動して、私の内なるシャルル七世に勝手に喋らせてみたらスムーズに書けました。
ある意味、自動書記だなこれは……。
*
アジャンクールの戦いの前に……。
ヘンリー五世が率いるイングランドが最初に上陸したのが、ノルマンディーの西端にあるアルフルールだ。
一方、ヴェルノンはノルマンディーの東側にある。
内陸からの入り口付近といっていい。
作者よ、読者諸氏のために地図を用意してほしいのだができそうか?
まあ、後でも構わない。
イングランドは、アルフルールを占領すると、海側を北上してカレーの港へ向かい、その途中にあるアジャンクールでフランス軍と戦った。この辺のいきさつは『7番目のシャルル【少年期編】』第三章を参照してほしい。
・第三章〈アジャンクールの戦い〉編:争いの始まり、それぞれの野心(1)
https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614/episodes/16816927859470987994
結果的に見れば、「イングランドは海沿いを北上した」わけだが、当時の人間は、イングランドがどう動くかなどわからない。
諸侯は、さまざまな可能性を見越して対策を講じる。
なお、最初の上陸地アルフルールは「セーヌ川の河口」でな。
川をさかのぼれば王都パリに着く。
このヤバさ、ご理解いただけただろうか?
地政学的に、「国を横断・縦断する大河とその流域」の情勢は、戦時でも平時でも国家の安寧にかかわる。王都につながる河口を占領されたのは、かなりまずい事態だ。最悪、川をさかのぼって征服されるかもしれないし、少なくとも、運河の流通を押さえられてしまうからな……。
ちなみに、ヴェルノンもセーヌ川沿いにある。
知っての通り、アンジューはロワール川流域に位置する。
つまり、アンジュー公(と私)はわざわざ、北側のセーヌ川流域まで出向いたことになるな。
なお、セーヌ川とロワール川は、どちらもフランスを横断する二大河川なのだが、セーヌは北側で、ロワール川は南側だ。
イングランド軍が、セーヌ川上流——つまりパリ方面へ版図を広げるのを阻止するために、アンジュー公が先手を打った(=ヴェルノンに進軍した)と考えるのが妥当だろう。なにせ、当時の王政は、アルフルールが抵抗している一ヶ月以上の間、ほとんど無策だったから。
えっ、アンジュー公はともかく、なぜ私がいたのかって?
別におかしくないぞ。読者諸氏の時代では子供かもしれないが、あのリッシュモンだって初陣は12歳だ。私がアンジュー公とともに、「ノルマンディーの入り口ヴェルノン」まで行軍していても不思議ではない。
実際の戦闘にはならなかったが、アンジュー公が睨みを効かせていることに意味がある。もし、王家から「ガンガンいこうぜ」と命令されたら、ヴェルノンからセーヌ流域を下ってアルフルール包囲戦の救援に行ったかもしれない。
ラノベっぽい作風を目指しているのに、小難しい話題ですまなかったな。
それでは、次回から新章を……
えっ、アジャンクール後のことも説明しろって?
しょうがないなーもー。
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近況ノートで、シャルル七世が兄の王太子に送った手紙の画像(一部)を公開しました。
https://kakuyomu.jp/users/shinno3/news/16818093074650595488
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