第9話 デートとかつお節



 あー。今日もお腹いっぱい。

 最後はイケメンの家で寝る前にかつお節を食べるだけねー。


 ただいまー。



 って、あれっ。

 外にいるのはお犬様じゃございませんの?


 どういうこと?

 いつも急に現れるからドキドキしちゃいますわ。


 あ。またあの女?・・・って事もなさそう。

 どうしたのかしら。



「よっ。」

 と後ろ脚2本立ちで前足を上げて挨拶している。


「ごきげんよう。こちらに御用がおありなの?」

 というか、その立ち方ヘンよ。


「用というか、会いに来ちゃいました。」


「誰に?」


「いやー。何というか、そっちもイケちゃうほうなんです。」


「えっ?今、何と?」


「なんでもないでーす。でも、コレ。お近づきの印に受け取ってください。」


 と礼をしながら差し出してくるのは、リボンを付けた生かつお節。


「えっ。まぁ!そのようなお気を使われなくってもよろしいのに。」

 やべっ。よだれ出てきた。


「どーぞ、どーぞ。」

 と塀とフェンスの隙間から差し出してくる。


「まあーよろしいんですの?」

 それを伸びあがって咥えた。


「ありがたくいただきますわ。」

 うれしい。自分に過去最高の大きなイイネあげたいわ。


「えへへっ。かつお節いいよねっ。あっしもスキです。」

 舌がペロンと出ちゃう。

 ダメだ―。どきどきするぅー。



 そこへ、仕事帰りのイケメンの乗る車がシャッターを開けて入ってくる。

 車庫から出てきたイケメンはフェンスの外にいる犬を勝手口の門から中へ入れてやっている。

「おう。よく来れたな、よーし。入れよー。」


 え・・・?

 普通に鍵開けて、お犬様を入れてあげてるんですけど。

 ここは、普通に追い返すのが普通じゃないですか?

 一応、わたくしのようなレディーのいる家なんですけど。


 犬は入った途端、走って猫のそばに行き顔をべろんべろん舐める。

 ぎゃー。そんなに急に舐め回さないでー。

 ちょっと、逃げますわよ。

 いきなりだったので思わず逃げてしまった。


「ああ。俺、今君んちの犬が来てるんだけど。うん、今、帰ったところ。そっちへ送っていこうかなと思ってさ。来る?じゃあ、迎えに行くよー。待ってて。」


 相変わらずイケボね。

 周りの空気までキラキラしちゃって。


 ん?あの女来ますの?

 へー。お気に入りですのね。

 悪い方では無いようですので、ちゃんとかつお節を貰えるのなら番になるのは反対はいたしませんが。

 お犬様の飼い主でらっしゃるみたいですし。


 というか・・・お犬様・・・そんなに見つめられますと流石に怖いです。

 やはり、こういう場合はちょっと離れていただいた方がよろしいかと・・・。


 ぎゃー。きたー。


 いや。それは流石にいきなりすぎますわ。

 と、爪を出さずにネコパンチを顔面にくらわす。


 ぽむ

 ぽむ


 パンチをくらった、いや、頂戴した犬はこのご褒美に溶けたが、一方では怒ったことも少しわかったのでちょこんと座って大人しくなる。


 ご褒美の肉球の感触に浸りながら自然と舌がぺろんと出る。


 怒られました。

 むふふ。

 そして、いただきましたよ。

 極上の肉球ぱんち。

 ありがとうございまーす



 ちょ・・・。なんなんですの?

 でも、まあいいですわ。

 嫌な気はしないですもの。


 ふふっ。大人しくお座りしちゃって。

 静かにしてるとすっごいハンサムでお綺麗な犬でいすのね。

 静かにしてるとですけど。


 ちょっと今お顔が溶けててだらしないですけれども。

 いいのです。目覚めてしまったわたくしにはそれもまた美味しいのです。

 わたくし、ちょっと照れてきましたわ。



 じーっと、見つめあう犬と猫。

 倒錯した愛が絡み合って、どうにもならない物語が流れ出す。




 <神>

あーらら。

君たち、それはちょっとおかしくないですか?


いや、良いけどな。今更だし。

応援はしてあげるぞ~。

それくらいしかできんけど~。


 それから、天使たちが忙しくなったら呼び戻すから、そん時は一緒に戻れ~。


えっ?嫌だ?

そうか。野良になりたいのか~。


それも嫌?


まあいい、どちらか選べ~。

面倒だから、質問は受け付けん。

じゃあな。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る