第6話 飛び出し確認
人間界は危ないです。車が人がいっぱいです。
信号もありますが見てないですこの天使様。
天使様が犬の私に言われるのは癪かもしれませんが、ちょっと天然過ぎません?
なんていうか、よくこれで生きてられますね。
あ。
そか、天使だから死なない?そんなわけないか。
というか、跳ねられたら痛いよ?
信号をみて止まるところはとまる。行くところは行くでシャキッとしないと。
こんな感じで。
まぁ、顔だけシャキッとしてもダメなんだけど。
ほぉーら。また人にぶつかりそうになってるし。
だからそのスマホ止めなさいって。
自転車来てますよー。
こわっ。道の真ん中こわっ。
端を歩いて・・・ほら。
ああ。今日はもう散歩はいいですから帰りましょうよ。
散歩行ってストレス溜まっちゃったら本末転倒じゃないですか。
胃がいたい。帰ったら胃薬ありますかね?
なに?このまま駅まで行く?
えー。大丈夫なの?
ん?帰りが遅くなる?
じゃあ、鍵下さい。勝手に冷蔵庫から適当に食べとくよ?
そんで、適当にお風呂して寝とく。
えっ?じゃって何よ?
そのままほっといていくつもり?鍵は?
外で寝なきゃいけないじゃん。
まてー。動物虐待反対ー!
マジかよ。
かなり待遇悪くなっちゃいました。
でもまあ・・・初めての地上ですし、今夜は街を満喫しま・・・
天使がまた車の行き交う道を突然に横切りだす。
ひえー。いい加減にしてー。
と、後ろから来た猫が渡ろうと横切りだした。
なっ?猫ハアハア!
と思った瞬間猛スピードで突っ込んでくる車に気がつく。
運転手は運転手は全く前を見ていない。
あぶねー!
考える間もなく猫を咥えて、
しあわせ~! なんて柔らかい猫の体ー・・・じゃなかった
猫を咥えたまま助走をつけて天使の尻に体当たりする。
運転手が手前で気が付いたものの、衝突コースだったので急ブレーキを踏んで止まる。
天使とあっしは、間一髪、車に跳ねられず助かっ・・・しっぽ踏まれてるー!
きゃいんきゃいんこいーん
悲鳴を上げた犬の口から猫が降り、大丈夫?と顔を見る。
天使は何事かときょとんとしていたが、ようやくハッとしてタイヤから尻尾をぶちっ!と引き抜いた。
ぎゃーっ
雑!
口からは幸せを失って、尻尾は少し毛が抜けて脈打つている。
尻尾をふーふーしていると猫は去って行ってしまった。
暗くてよく見えなかったけど絶対かわいい猫だったと思う。
そして、あのふらっと去っていく姿がたまらん。
おじさんの運転手が降りてきて声をかけてくる。
「すいません。大丈夫ですか?気が付かなくて・・・。」
にゃろうめ!と思ったけど猫を咥えられたからちょっと幸せに浸ってる。
尻尾はまだ脈打ってるけど。どうにかしてください。
「いえ。大丈夫です。すみませんでした。」
と慌ててペコペコ謝ってる。
あの。あっしのしっぽ・・・
天使様は何ともなかったし猫だって助けれたし、口が幸せだし、脈打ってるけど。
口が幸せ・・・
顔が溶けそうだ。
天使はそんな犬を見ながら、ふっと笑い電話を掛ける。
「あー。もしもし。今日コンパ、パスするわー。うん。ちょっとねー。え?ここで待ってればいいの?うん。わかった。駅の裏から・・・」
えー・・・。断らんでもいいのに。
どうぞ、行ってらっしゃいまし。
と言いますかですねー。
しっぽがねー・・・
車の運転手は申し分けなさそうに名刺を渡し、名刺交換をすると去っていく。
あのー。しっぽ・・・
すぐに違う車がやってきてガテン系イケメンが降りてきた。
「パワーズ様!なんでここに?」
「大丈夫?何かあったって聞いたから・・・。」
あらやだ。イケメンのイケボ。
なんだろう。天使って美女にイケメンにイケボ・・・そんなのばっかだよね。
ひがんでないよ?
ちょっと、野良っぽいとか、言われてもへーきさっ。
それよりかさー。しっぽがねー・・・
赤くなってる天使に能天使は続けて言う。
「今日は合コンへは行けないんだけど近くにいたからね。様子を見てきてくれって。
ドミニオンのやつ。」
「ありがとうございます。でも、何ともないんです。この子が助けてくれて・・・。」と、犬の頭にてを乗せる。
「そか。よくやったな。」
とニカッと笑う顔がキラキラだー。
ぐはー。さずが。イケメンは違うなー。
「そうだ。合コンは行けないんだが-少し時間があるし、家まで送っていこう。何処か寄る所があったら寄って行くけど?」
「え?いいんですか?お仕事なんじゃ?」
「ああ。10時からな。途中で抜けるのもなんだし断ったんだ。君が構わないならそれまで付き合ってよ。」
「でも、この子を預かってるから、家まで連れて帰らないといけないし。」
「なら、こいつも一緒に。途中でご飯して送るよ。ペットOKの店知ってんだ。」
と、ニカッとキラッと振りまく。
あたりが眩しいんですけど。
そこに、天使の下した手に小さくガッツポーズしてるのを犬は見逃さない。
おや。天使様、良かったじゃん。
あっしもあったかいご飯に寝床ゲッート。
アパートまで送ってきたイケメンにちょっと照れながら天使がお礼を言い、振り向きながら車に乗るイケメン。
なんすか?めっちゃ盛り上がってるじゃん。
げぷー。喰った、喰った。
毛づくろいしてねよ。
って、どこで寝よ? とりあえず隅っことチェストの隙間とかよさげ。
どっこいせ。
今日は疲れましたと。
と、天使がそばに来る。
「今日はありがとね。合コン行けなかったけど代わりにパワーズ様とデートの約束しちゃったもの。」
おー。そうでしたかー。
よかよか。頑張ってくださいねー。
「のら犬君は恩人だよー。」
え? 今、聞き逃してはならない事言いませんでした?
恩人の前にー・・・
「これねー。」
といいながら、唐草模様の風呂敷を出してくる。
キター。めっちゃ嫌な予感するー。
「ガブリエル様がこれ渡された時にね、ついにこの子も野良になるんだーと思ってたの。」
と、風呂敷を目の前に置く。
ガーン!
終わった。終わってしまった、あっしのゴロゴロ生活。
明日から残飯漁って保健所の職員に追いかけられる毎日になるんだー・・・。
心に吹く風が一気に厳しく強くなっていく気がする。
そして、ここから先どうやって生きていけばいいんだ。
家もなく、ほ〇っこもジャーキーもない毎日に、何を希望を持って生きればよいのか―。
あ。ほねっこは持ってきたな。
あれは風呂敷に包んでと。
と、風呂敷を担いで首の前でくくる。
「なにやってんの?」
と天使が笑いながら言う。
「やだ。勘違いしないで。捨てたりしないわよ。」
と、外してやる。
代わりに、能天使と買い物してきた首輪を取り出してつけてやる。
「はい。できた。あっち(天国)と違ってここはこれがないとダメなのよ。だから我慢してね。」
ハイ!いいっす。
あっし、ねえさんのイヌ(下僕)になります。
あっ。元から犬か。
「だから、ここがあなたのお家よー。ちょっと狭いけど。」
と、トイレとかおもちゃとかを袋から出してくる。
「ベッドはこの毛布ねー。」
と、マットの上に毛布を畳んで置いてくれる。
ねえさん。あっし泣きそうです。
やたー。
「あー疲れたな―。風呂はいろっと。」
と、風呂に入り腰に手を置いてビールを飲むと、テレビを見ながらブラッシングし、よだれを垂らしながら就寝した。
しっぽのことは忘れられてるなー。
夢をみた。
<神>
あー。これ、そこの。そこの犬。そなたに幸せを~
届いたか?
なにぃ?微妙?
そのようなことはない、気のせいだ。
これからも見守っておるぞ~。
暇だったらな。
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