第2話 弐


「ハーイ、おやすみ~」

「チチッ」

 頭の上を舞う小鳥に話しかける、スカートをはいたモフモフの後ろ姿。

 大きな木の下で、オレは目を開けた。

(なんだ、ここは?)

 辺りを見回すと。

 熊さんに出会いそうな、花咲く森の道。

 童話によくある、メルヘンな世界が広がっている。

「おや?迷い込んで来てしまったの、かな」

 モフモフが振り返ってきて、普通に話しかけられた。


―『オヤスミンという怪獣が現れるので…………』


(怪獣か?) 

「……オヤスミンさん?」

 恐る恐る声をかけると、

「嗚呼。ボクをそう呼ぶってことは、あちら側の方ですねぇ」

 耳がピクンと動いた。

 表情は読めないが、歓迎されていないことは感じる。

 ピーターさんと呼びたくなるような、うさぎさん?としっかり目が合った。


「とりあえず、もうすぐ日が暮れるから、ついて来て」

 ピョコピョコと音がしそうな二足歩行で、可愛らしく先を歩く。

 身長はだいたいオレの腰くらい、柔らかそうな薄茶色の毛並み。

 歩くたびスカートから見え隠れする、丸い綿毛の尻尾に目が離せない。

 足がふらふら勝手について行く。

(怪獣か?)

 オレからしてみれば、太眉とちょび髭の自称宇宙人のほうが「怪獣」だ。


―『このミッションが成功しないと、帰れませーん』


「はぁ~」

 精神的な疲労から息が漏れる。

 蓄積した仕事の疲労感かも。

「お腹、空いたの?」

 オレの溜息に耳がピクっと反応して、オヤスミンが振り返る。

「……そうかも、しれない」

 腹の辺りをさすって考えた。

 どのくらい時間が経過しているのか。

(でも、生野菜、嫌いだな)

 頭の中に野菜スティックが浮かんだ、しかもニンジン多めで。


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