ときどき俺は考えてしまうんだ
真堂 赤城
第1話
あいつは天才だった、昔から剣の腕が良かったんだ。
大会に出れば、いつも優勝していて。
そしてその才能にかまけることもなく。
いつも、いつも剣を振っていた。
あいつは剣が大好きで、ずーっと振ってたんだ。
それに比べて俺は。
才能はあったんだ、でも努力はできなかった。
あいつみたいに、四六時中剣について考えるなんてことは出来なかった。
それでもやめるなんてことはなかった、なぜかはわからない。
あいつが側にいて、俺を誘ってくれてたからなのか。
俺が剣を好きだったからなのか、わからない。
それで、俺達がある程度剣士として有名になってから、冒険者になった。
優秀なやつが来たと、ギルドは喜んでた。
そこからは順調だった、その辺にいるモンスターを狩っても、ダンジョンに潜っても、その場のノリで適当にやってても、なぜかうまく行ってた。
俺の元々の性格もあるが、今までのこともあって気が抜けてた。
俺はヘマしてしまったんだ。
モンスターにスキを突かれて殺されそうになった。
それをあいつが庇ってくれたんだ。
俺なんかいつも適当にやってて、いつ死んでしまってもいいと思ってた。
あいつなら、俺の死なんて軽々乗り越えて、もっと強くなって、もっと上に行けると思ってた。
なのに、なのに俺を庇って右腕を失っちまったんだ。
それでもあいつは強かった、でも両腕だったらもっと強かったんじゃないかって。
そう考えてしまうんだ。
それから俺は、適当に生きるのをやめた。
剣の練習もしっかりして、ダンジョンの探索も真面目にして。
そうして俺は冒険者最強と呼ばれるほど強くなった。
それでも、やっぱり考えてしまう。
あいつならもっと強くなれたんじゃないかって、あいつならもっとうまくやれたんじゃないかって。
そう何度も自問自答して、それでも答えは出なくて。
とうとうあいつに気づかれたんだ、俺がこんなことを考えてるんだって。
そしたらあいつは、
「そんなことは考えなくていいんだよ」
「私は、君があのとき死ななくて本当に良かったと思ってるんだよ?」
「私の腕一つで、君が助かったのなら、安いものだと思ってるんだ!」
「だから君は、そんなに思いつめなくてもいいんだよ?」
「それでも君が気にしてしまうのなら、いつまでも私と一緒にいてね?」
こう言ってくれたんだ。
本当に情けなかった、あのときモンスターから助けてもらっただけじゃなく、今も俺の心を救ってくれる。
それから金もしっかり溜まって、ある程度年も取って、俺はあいつに告白した。
それからは話がトントン拍子に進んでいって、俺はあいつと、いやカレンと結婚することになった。
それでもときどき、あのときのことを考えてしまう。
俺はやはり、心が弱いんだと思う。
でも、ずっと思い詰めてたあのときと比べると、俺は今とても幸せだし余裕がある。
カレンには、一生頭が上がらない。
ときどき俺は考えてしまうんだ 真堂 赤城 @akagi33229
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