第134話 自分は屑だと言われたり
@ purinmania:和美の気持ち、痛いほどわかります。牛になっていく過程にも共感しました!
――ん?
公開ボタンを押してしばらくしてから、ワークスペースを見直す。最新話のPVは一、コメントが一。――案の定、コメントはプリンマニアさんだった。
牛になっていく過程に共感……? あー~~。……うん?
共感するほどの心情描写なんて、したっけ。自分の書いたものを読み返してみる。
和美がヤキモチを妬く描写が少しある。牛になっていく過程って何だ? 芽生が突然興奮して牛と化したシーンしか見つからない。
共感した? コレに。やべーな。プリンマニア。どこまで共感力が高いんだ。
コメントには続きがあった。
――和美を一人遺していけないという桜の愛情にも涙が出ます。桜、優しい! カルメンの教訓も胸に刻み込みます(ノ_<)
コメントの返信は、ありがとうございます、という軽いものにとどめた。よくわからなかったからだ。コメントで返信するかわりに、チャットで直接聞く。
おつぼねぷりん:カルメンって?
purinmania:カルメンって、恋する相手に執着するあまりお互いを破滅させてしまうでしょう。あの話って、ホセが、立場も仕事も失ってしまったことも大きいと思うんですよね。自分の全てを失いすぎたことがね。わたしも、ルームメイト以外の、わたしにとって大切なものも、大切にしないとダメだなって。反省したんです
聞いたはいいが、結局よくわからなかった。カルメンで検索をかける。オペラ作品について言っているのか……? ホセっていう人がカルメンって人に振られて刺し殺す。物騒だな。プリンマニアさんがわざわざ言ってくるってことは、百合? ヤンデレ百合? いきなり話が飛ぶから、よくわからん。
おつぼねぷりん:すみません。カルメン? 観たことないので、よくわからなくて
purinmania:そうなんですか? すみません。恋愛もののジェラシーのシーンで、牛とか闘牛とか入れてるから、てっきり絡めてるのかと
おつぼねぷりん:そんな、
闘牛を入れたのは、芽生に反復横跳びさせてモーモー言わせたいっていう、それだけだったんだけど。こんな真摯な感想をもらってしまうと、いかに自分が適当な動機で書いてるかが浮き上がってくるな。
おつぼねぷりん:なんか申し訳なくなってきた
purinmania:申し訳ない?
おつぼねぷりん:なにも考えないで、ただ書きなぐってしまったので
purinmania:天から降りて来た、みたいなヤツですね?
う……。うん……? なんだかプリンマニアって、私を過大評価してないかな。
おつぼねぷりん:何もほんとに考えてなかったです。すみませんって感じ……
purinmania:わたしかなり、内容で、きた! って思いましたけどね。久しぶりのおつぼねぷりんさんの小説っていうのも嬉しいし。和美に対して共感しかない
……共感?
おつぼねぷりん:ありがとうございます。共感してくれたんですね
purinmania:ルームメイトのことでちょっとやられてて
ああ、……なるほど。
なんかおかしいと思った。プリンマニアさん、自分と重ねてるからか。
タイミング的に何かあったのか。それも含めての共感なんだろう。
おつぼねぷりん:なにかあったんですか
purinmania:妬いて当たった
おつぼねぷりん:ヤキモチ? やいたの?
purinmania:しかも、ゴメンって言おうとして、目があったらなんだか、たまらないっていうか、
purinmania:これ、言っていいのかな
おつぼねぷりん:いいですよ
おつぼねぷりん:どうしたの
purinmania:どうかしてた。そのままハグした
おつぼねぷりん:ハグですか
purinmania:匂いも嗅いだ
うっ……。
それは……。ハグまではともかく、匂い嗅いだってところが、プリンマニアさんらしいというか、変態くさい。セーフなのか?
おつぼねぷりん:それはまた
向こうの様子どうですか? 大丈夫なんですか? ……って、聞いていいのかな?
purinmania:で、そのまま気分がぐちゃぐちゃになって、また当たった。屑すぎる
おつぼねぷりん:どうしちゃったの
謝れそうですか。仲直りできそう? そういった言葉を打っては、送信する前に消す。なんて声をかけたらいいんだ。
おつぼねぷりん:大丈夫ですか? プリンマニアさん
purinmania:ヤバイから距離置きました。最悪ですよ。当たるか突き放すかぐらいのコントロールしか利かない
おつぼねぷりん:なんでそんなヤキモチ? みたいな事になったの
似たようなコントロール不能に陥った事あるから、私にプリンマニアさんをどうこう言う資格はないけど。向こうに彼氏ができてとか、そんな話がきたらどうやって慰めたらいいのかわからないな、これ。
purinmania:向こうが、わたし以外とプリン食べてきたんですよ
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