第48話 苺小説を書いたり
どうして、最近、手をにぎってくるんだろう。
桜は少し困っていた。
イヤなわけじゃない。ただ、困る。私は、スキンシップに弱いんじゃないか?
大きすぎてスプーンで掬えなかった苺を、和美は指で摘んで、私の唇に押し付けた。齧ると鮮烈な酸味が広がって、私は……。
「うーん」
私は思わず呻った。苺はおいしかったけど、これはプリン小説なんだよな……。今までずっとプリンを食べるだけの話を書いてきたが、最近話が展開してきて、それ以外も書くようになってしまった。スプーンペロペロ、そしてブリッジ。
ここまでやってしまうと、またプリンを食べるだけに戻るのが、つまらなくなってくる。新しい展開を入れたくなるが、これ以上のエロをプリンに関連させるとなると、ちょっと難しい。苺の美味しさを表現してみたが、それだけではピンとこない。もう少しエロくしたいんだけど。
いや、エロい方向のプリンエピソードも考えていなくはないんだけど、桜と和美でやるには、まだそこまで関係が追いついていないわけで。
「新しい応援コメントが1件あります」
メールに入って来た通知を覗くと、お局小説に対してのプリンマニアさんのコメントだった。
――お胸のはずれるマサコさん、超便利ですね!
返信しにくいこと書くなよ……。
便利ってなんだ便利って。
ココナツミルクも飲めるしね♪
私はコメントに適当に返信して、ぐったりした。
プリンマニアさんとのチャットのほうにトークを投げる。
おつぼねぷりん:もう、半分に切ったココナツのお椀にプリンをのせようかな
purinmania:w
おつぼねぷりん:プリン小説は、更新が止まってしまいそうです
purinmania:え? どうしたんですか? 楽しみなのに
おつぼねぷりん:なんていうか、今までプリンに集中してたのに、和美が桜の手をにぎるようになったら、そればっかりに意識が行って、プリンをそういう風に感じられないんです。新しい展開にもしたくなってきているけど、思いつかないんですよね
purinmania:思いつかない?
おつぼねぷりん:にぎられた手のことばっかり考えちゃうんですよ。たとえばプリンでこれ以上って、どういう展開まで考えられます? プリンマニアさんなら。食べさせあうその先ですね。官能が書きたいのに、これ以上、プリンだけでは、そういう方向にならない気がするんですよ
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