第54話 孤児たちと再会
「見えた!」
視力の良いダニェルが、五十人近い孤児の住むカテコ村を最初に視界に捕らえた。
「あっち!」
ダニェルが村のある場所を指でさして、
「オッケー」
貴子が小山型円盤の進む方向を微調整した。
「カルィン、結婚式、準備、やる!」
ダニェルは、嬉しそうに言って、
「タカコ、あげた、服、着る! とても、豪華!」
笑顔ではしゃいだ。
「お、結婚式の準備やってんのか。ちょうどいいじゃん」
貴子もつられて微笑んだ。
二人が前にカテコ村を訪れた時の話。
貴子は、カルィンがエイジンタイオから取り戻したお金を、結婚祝いとして、結局カルィンに渡していた。
それと、町の人にもらった絹生地の巻き物や衣類も全部あげたのだった。
結婚式は、それらを使った豪勢なものだろうと想像して、貴子は今から見るのが楽しみだった。
カテコ村が近づくにつれ、エイベイエの村人たちが興奮をあらわにしはじめた。
みんなにも結婚式の準備の様子が見えてきたからだ。
シェゼは、円盤から落ちそうなくらい端のほうに立って、羨ましそうに式を眺めていた。
貴子は、高いところが苦手なので、円盤を飛ばしている間は、ずっと真ん中辺りにいた。
さらに村との距離が縮まると、
「ギャアーーーーーーーーーーッ!」
下から子供たちの悲鳴が聞こえてきた。
空飛ぶ円盤を見てのものだと下を見ていない貴子にもわかる。
「カルィン! ミィテヤ! メイ ニス ダニェル!」
ダニェルが自分をアピールして手を振る。
「ダニェル!」
みんながダニェルに気づいて悲鳴がおさまった。
「ダニエル、シェゼ、円盤の下に人とか動物いない?」
高いところをまったく怖がらない二人に貴子が確認を求める。
ダニェルがシェゼを誘い、二人が円盤の縁から下を覗き、
「いない!」
「ネェン!」
と答えたのを聞いて、貴子は、
「よし。じゃあ、下ろしまーす」
円盤を降下させた。
円盤は、ゆっくりと高度を下げてゆき、ズズンと地響きを立てて大地に落ち着いた。
「タカコ!」
カルィンや花嫁のミハや眉毛君、カテコ村の子供たち全員が貴子に気づき、
「タカコーーーーーッ!」
喜びを爆発させて貴子のもとへ走りだした。
「みんなーーーーーっ!」
貴子も子供たちへと駆け寄った。
「ガウーーーーーッ!」
ポォミも一緒に駆け寄った。
「ギャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
子供たちは、逃げた。
◇◇◇
ダニェルがカルィンに事情を話し、ここにお墓を置くことを頼むとカルィンも村の子供たちも快く受け入れてくれた。
エイベイエ村の老人たちも孫のような子供たちばかりのカテコ村をすぐに気に入り、満足そうな笑顔で子供たちに挨拶をした。
シェゼも同年代の子供がいることを喜び、照れ臭そうではあるがポォミともども挨拶をしていた。
すべてがうまくいき、貴子とダニェルは、ハイタッチを交わした。
貴子とダニェルは、エイベイエ村の老人たちと一緒にカルィンとミハの結婚式に参列し、前回のように慌てることなく三日間ゆっくりとカテコ村で過ごした。
別れの時、涙と笑顔で見送る村人たちの中から、シェゼがダニェルに駆け寄り何かを言った。
ダニェルが返事をすると、シェゼはガックリと地面に膝をついて項垂れた。
会話の内容を尋ねた貴子に、ダニェルは、
「シェゼ、言った、『私、ダニェル、ずっと、待つ』。私、答えた、『ありがとう。シェゼ、ずっと、友達』。シェゼ、膝、ついた」
と不思議そうな顔で話したのだった。
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