第3話 「新たなCAIカード」
「親方、これ」
『ああ。多分、相当古いCAIカードだろうな』
「えっ、それなら貰って良いですか?」
『勝手にしな。お前が使っている奴より、酷い性能かも知れねーぞ』
「まあ、試してみたいから」
その後、親方と小惑星を探ったけれど、他には何も無くて、結局そのまま作業コロニーへと戻った。
回収したデブリパーツを清算し、今日の仕事は終了。
SWを作業場のハンガー(格納スペース)に戻し、急いで機体の整備を済ませる。
新しいCAIカードを早く試したくて、直ぐに部屋へと戻り皆の食事の準備を整えた。
俺達の住居は、この作業コロニーの内部にある。
政府の中枢が集まる中央コロニー群周辺の巨大なコロニーに比べると、欠片の様な大きさらしいけれど、俺はこの作業コロニーしか見た事が無いので、そう言われてもピンとこない。
巨大な筒形のコロニーは直径だけで六キロメートル以上あり、巨大な街が形成されているそうだが、俺には見当も付かない。
この作業コロニーは、それなりに回転しているけれど、足が床から離れない程度の遠心力しか発生していない。
まあ、中央のコロニー群からは、移動してくるだけで一ヶ月以上も掛かる貧しい周辺部のコロニーなどこんなものだと親方が言っていた。
それでも、近隣宙域に巨大コロニー群があり、そこの経済エリアに属しているから、しがないジャンクパーツ回収屋でも何とか食っていけるのだ。
親方は身よりのない俺を育ててくれた。
経緯は知らないけれど、亡くなったおかみさんが赤子の俺を引き取りたいと言って、親方と一緒に育ててくれたのだ。
親方が言うには、俺は一六歳らしい。本当の誕生日は知らないが、引き取られた日を一歳の誕生日と言う事にしたと言っていた。
仕事仲間のあんちゃん達も俺の事を可愛がってくれて、俺は小さい頃から親方と年上のチーあんちゃん、そしてその弟のニイあんちゃんの輪の中で育った。
ずっと作業場や回収現場にいたから、SWの整備とか機能とかについてはひと通り分かっている。
もちろんSWの操縦にしても、同じ年頃の奴に比べたら上手いはずだ。近くに同じ年頃の奴が居ないから分からないが、上手いと思っている。
俺が乗っているSWの機体は、皆が少しずつ集めてくれていたパーツを組み上げた物だ。オンボロだけど、自分専用の機体だから愛着が半端ないのだ。
作業場に固定されたSWのコクピットに乗り込み、今まで使っていたCAIカードを引き抜き、軍用機から拾って来たカードを挿し込む。
機体の電源を入れると、動力の起動音と共にモニターにCAIの起動画面が浮き上がった。
《Control by Artificial Intelligence…………》
CAIの読み込みが続く。
初めての読み込みなので時間が掛かるが、今のところエラーなしで読み込んでいる。
画面に様々な文字が流れ、コクピット内の装置が起動と停止を繰り返していた。
しばらくすると、機体に付いている沢山のスラスターから微量の噴射音が連続して聞こえ、コクピット内の全面モニターに作業場の景色が映し出された。
《Completion……》
完了の文字が浮かび上がる。軍用CAIとの同期が出来たのだ。
「CAI、機体チェック」
ワクワクしながら、機体のチェックをさせてみる。高性能だったら秒で返事が返ってくるはずだ。
『各部連結に問題なし。左右脚部スラスターに出力差異有り調整済み。メインブースター良好。動力部問題なし。生命維持装置部問題なし。機体固定により可動部の確認はスキップ』
残念ながら秒で返事は返って来なかったが、前のCAIカードに比べたら格段に速い。
それに、機械的な女性の音声には変わりないけれど、抑揚がしっかりとしていて滑らかだ。
操作に関しては外に出て動かしてみないと分からないけれど、きっと今までよりも優秀なはずだ。
余りの嬉さにコクピット内で小躍りしてしまった。拾い物とはいえ、軍用のCAIを自分のSWに導入できたのだ。早く明日の回収作業がしたくて、ウズウズしてしまう。
────
「リオン、起きろ!」
親方の大声で目が覚めた。
全く寝た気がしないと思い時計を見ると、寝てから二時間も経っていない。こんな時間にどうしたのだろう。
開かない
モニターには戦争シーンが流れている。映画でも見ているのだろうか。眠たくて頭が回らない。
「親方、どうしたんでふか。ふあぁぁぁ」
「おう、リオン。戦争だ。戦争が始まっちまった」
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