だって、本当に、馬鹿みたいな理由だったから。


名前が一緒?


何だよ、それ。


そんなの、この場で一番相応しくない理由だ。


でも、そんなことで笑ってしまった。


きっと、私が抱えていた問題なんて、その程度のものだったのかもしれない。


「確かに」

つられたかのように彼が笑う。


誰もいない、二人だけの冬空の下で、震えた笑い声が、不格好に木霊していた。


「ねえ、きっと僕たち、本当は凄く気が合うと思うんだ」

彼が、私に笑いかける。


それは、どこか温かくて、柔らかくて、


「そうかもしれないね」


似合わないけれど、やっぱり、眩しいほどに輝いていて


「だからさ、友達になろうよ。きっと、良い友達になれる」


私は、あの時、心が感じた閃光と光の熱を、一時たりとも忘れることはないだろう。


あの日以来、私の元に、雪の降る寒い冬は訪れていない。


弱弱しく、不格好で、それでいて、焼ける程の熱を帯びた一筋の光が、今も確かに、私の中で生きているから。

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