本当は、誰よりも、自分の痛みを叫んで、消えない傷を見せつけて、


同情を求めたかった。


共感を求めたかった。


一人でなんて、生きていけるわけがない。


そんなこと、痛いほど身に沁みて分かっている。


でも、現実は、物語よりも淡白で、それでいて、複雑だから。


実際は、悪意に対して、一人で打ち勝てるなんてことは無いし、かといって、その為に友人を作ろうとしても、そもそも、友人を作れているのなら、それが許されていたのなら、この問題自体が前提として成り立たないわけで。


夢がないくせに、物語よりも難解なもんだから、分かり切っているような当たり前の事実を、私にはどうすることも出来なかった。


だから、私は、本音を、心でもないどこかにしまい込んで、あの花のように、何も憎まず、求めず、綺麗で、孤高な人であろうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る