そうすることで、私と、私が生きるこの世界に、夢を持たせようとした。


単純で、分かりやすいものにしようとした。


一輪の花と、独りぼっちの少女が出会う、そんな、ありがちで、安っぽい夢物語に。


それを、あの男が、ぶち壊した。


どうでもいい人だった。


憧れも、妬みも、多少抱きはしたけれど、私にとっては、外の世界の人で、何の接点もないはずの、知人とも他人とも言えない、そんな微妙な関係性であるはずだった。


それなのに、私と、あの小さな花だけで十分だった物語に、突然、あの男が割り込んできた。


私の物語のテーマには、到底合わないはずの彼が、痛みを叫びながら、良く知っている顔で笑って。


おかげで、整合性は崩れ、私の物語は、粉雪のように吹き消えた。

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