「私は…、私は、綺麗なんかじゃない。何も知らないくせに、勝手な事、言わないでよ!」


「…」

彼はまた、何も言わずに私の言葉を受け止める。


その、苦しげな顔が、腹ただしい。


安易な同情をすればいいのに。


安っぽい涙を流せばいいのに。


彼は、何も言わない。


何も流さない。


どうして、そんな顔が出来るのよ。


あなたは、そっち側の人間のはずでしょ。


そうでないと、いけないのに。


そうであって欲しいと、思っていたはずなのに。


「だって、だってあなたは、クラスの人気者で、いつも、皆の中心にいて、私とは違う世界にいるから、それで良かったのに。眩しさに、眼が眩むだけで済んだのに」

私の声は、それはもう、酷いぐらいに震えていた。


きっと、彼の比じゃないぐらいに。


―やっぱり、今日は良く冷えるよ。

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