⑭
「何で、その言い伝えを?」
「…僕には、自分の色がないから」
そう言いながら、彼は私に笑う。
乾いた、とても虚しい笑顔で。
―ああ、やっぱり。
私は、心の中で、彼の人物像へ修正を加える。
「君は、僕の事を、どう捉えてる?」
「…感情を読み取るのが上手くて、気持ち悪いぐらいに人の望む事が出来る、賢い、クラスの人気者。私とは、真逆の人」
それが正しくはない事を、私はもう分かってしまっている。
ただ、認めたくないだけだ。
「そっか。うん、そう見えるんだろうね」
だから、そんな顔で笑わないでよ。
だって、ずるい。
そんな顔されたら、こっちが泣きたくなる。
最後まで、理解できない、眩しいままの奴でいてよ。
「確かに、そうなるように振舞っている。間違っては無いよ。でも、正しくもない」
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