「何で、その言い伝えを?」


「…僕には、自分の色がないから」

そう言いながら、彼は私に笑う。


乾いた、とても虚しい笑顔で。


―ああ、やっぱり。


私は、心の中で、彼の人物像へ修正を加える。


「君は、僕の事を、どう捉えてる?」


「…感情を読み取るのが上手くて、気持ち悪いぐらいに人の望む事が出来る、賢い、クラスの人気者。私とは、真逆の人」

それが正しくはない事を、私はもう分かってしまっている。


ただ、認めたくないだけだ。


「そっか。うん、そう見えるんだろうね」


だから、そんな顔で笑わないでよ。


だって、ずるい。


そんな顔されたら、こっちが泣きたくなる。


最後まで、理解できない、眩しいままの奴でいてよ。


「確かに、そうなるように振舞っている。間違っては無いよ。でも、正しくもない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る