「禁断の果実を食べた事で、アダムとイブは楽園を追われることになる。悲しむイブを哀れんだ天使は、舞い落ちる雪をスノードロップの花に変え、『もうすぐ、春が来るから絶望してはいけませんよ』と二人を慰める。そういった言い伝えから、スノードロップは、春の訪れを告げる、希望の花とも呼ばれているんだ」


「へえ、良い話ね」

震えた声のくせに、中々いい語りだった。


春の訪れを告げる希望の花。


確かに、この花からは、そういった類の力強さを感じる。


「もう一つ、好きな話がある。こっちの方が、個人的には本命だ」


「聞かせてよ」


「…自分に色がない雪は、色を分けてくれるように花々に頼んだが、全て断られてしまう。それに唯一答えたのがスノードロップで、スノードロップは、雪に色を与える花だと言われている。ドイツの言い伝えだよ」

彼の声の震えは、幾分か増しになっていた。

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