「同じクラスの雪村さんだよね。きちんと話すのは初めてかな、僕は」


「知ってます。秋川雪人」

彼の言葉に被せるように答える。


人見知りと、緊張と、焦りが、私にそういった態度を取らせていたのはもちろんある。


ただ、それ以上に、私は彼が怖かった。


男の人が苦手、というのも理由としてはあるだろう。


私に向けられる様々な視線の中でも、男の人から向けられる、あの纏わりつくような視線が、私はとにかく苦手だったから。


彼にそういった視線を向けられたことは無かったけれど、同じ男というのは、充分な理由になった。


しかし、それよりも、私は彼の、他の人たちと違って、行動原理が読めないその得体の知れなさの方に怯えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る