私とは正反対な、対極の世界で生きている人。


彼に抱いた第一印象は、そういったものだった。


だから、そんな人物にいきなり声を掛けられた私は、それはもう焦った。


情けないほどに。


まさか、こんな校舎の隅っこに人が来るとは思っていなかったし、私だって年頃の女の子な訳で、こんな所で、惨めに泣いていた所を、同じクラスの男の子に見られてしまった可能性を考えたら、悲鳴の一つや二つはあげたくなる。


私は、羞恥心で悲鳴をあげたい気持ちを必死に抑えながら、至って平静を装いながら「…何か、用」と答える。


我ながら、可愛げのない女だなと思う。


「驚かせるつもりはなかったんだ、ごめんね」


彼は、そんな私の態度に不快感を示すどころか、逆にこちらを気遣うような言葉をかける。


らしいと言えばそうなのだが、当たり前のようにそれをやってしまう彼に、わたしは気持ち悪さを覚えた。

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