それが、実際の所正しかったのかは、直接彼に聞いてみないと分からないが、少なくとも私にはそう見えていたし、彼のそんな立ち振る舞いを見て、賢い子だ、という評価をしていた大人たちも居た。


他にも、彼が人を惹きつける要因があった。


寧ろ、こっちの方が、理由としては多いのかもしれない。


彼は、感情の機微を読み取る事に長けていたが、その中でも特に、人の痛みや苦しみに敏感だった。


人の痛みを、誰よりも早く感じ取り、その人の痛みに共感しながら、悩み事を聞く姿が、休み時間や放課後の教室でよく見かけられた。


彼の元に、多くの人が集まりながらも、向けられる感情が、彼への好意だけで占めていたのは、彼の技能や立ち回り以上に、他者の痛みへの共感力が要因だったのだろう。


そんな彼が、誰からも「優しい」という評価を受け、クラスの中心人物となるのに、そう時間はかからなかった。

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