彼の立ち振る舞いは、理解は出来ても私には納得の出来るものではなかった。


だから、その行動にはきっと裏があると思えてならなかったのだ。


「花を見てたの?」

彼が私に訊ねる。


それは、こちらに注意を払いながら、慎重に言葉を選んでいるようにも思えた。


そう考えた方が寧ろ自然で、そうなる事が、やはりとても気持ちが悪い。


この人に、見透かせない心はなくて、それを私は、当たり前だと思っている。


「何で、こんな所に」

私は、この人が苦手だ。


見えなくていいものが見えてきて、気付かなくていいことに気付かされそうだから。


彼と話せば話すほど、私の世界が、壊れていく音がする。


「その花を見に来たんだ」


「花を…?」


「うん。いつも、この花を見るために、ここを一回は訪れる」

そう言いながら、彼は花の方へ近づいていく。

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