そんな私が、彼と初めて出会ったのは、雪の降る、寒い冬の事だった。


時が経つにつれて、昔の記憶は風化し、今では覚えていることも少なくなってきたけれど、あの時の事だけは、消えることなく、私の中で、鮮明に残っている。


その日も、私は相変わらず、孤独感と自身への嫌悪感に苛まされて、惨めったらしく泣いていた。


一日を生き凌ぐため、いつものように、一輪の小さな花を眺めて涙を拭いながら


―私もこんな風に、強く、綺麗に生きれたなら―


などと考えていた所に、突然後ろから声を掛けられたのだ。


それが彼、秋川雪人と私の初めての邂逅だった。


彼は、中学に上がるタイミングで、都心からここに引っ越してきた都会っ子で、都心への憧れが強い田舎者たちにとって、彼は、私と違った意味で注目を集める存在だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る