第4話:覗き見るか?:マジの生い立ち、リアル親ガチャを見ろ!
生まれ堕ちたときから両親は私の前で絶え間なく税金のことでケンカしていたような気がする。
私は、自動車会社の下請け・孫請け工場が密集する中部地方の田舎町に生まれ堕ちた。
1994年生まれで、2019年時点で25歳となる。
兄弟は2歳上の兄が一人いる。仲は良かったと思う。
一年中、両親が税金をめぐって大ゲンカをするので、その惨めな戦場で肩寄せ合って生きてきたという感じか。
とにかく税金でケンカしているか、疲れ切って寝ているかの親だった。
父は、自動車部品に使われる特殊な形状のネジを作る社員7人の超零細工場勤務。
母は、日勤・
どちらも薄給極まりなく、いつも、どちらの給料で税金や公共料金を払うかでケンカしていた。
そして、過酷な肉体労働で、食事する以外は疲れて寝ていた。
「睡眠が命」の生活だった。
なので、私の家には笑顔がなかった。
日々、疲弊していき、そして蘇生することはない。
私が成長するにつれ、二人はどんどん病人のようにやつれていった。
とにかく貧乏でお金が無く、極めて治安の悪い団地住まいなので、幼稚園の頃から、「あの子とは付き合うな」と、同級生の親から眉をひそめて後ろ指さされながらやるせなく育ってきた。
私が小学校へ上がった2000年代あたりから、孤独死と外国人労働者の犯罪が問題視され始めた。
月に1回、異臭がすると、たいてい独居老人が孤独死しているか、外国人がボヤ騒ぎを起こしていた。
中学生になったころには、居住者の半分以上が外国人で埋め尽くされていた。
イラン
中国
マレーシア
インドネシア
ベトナム
フィリピン
ネパール、
たまに何で生計を立てているのか分からない謎の白人もいた。
殺人事件も何度も見たことがある。
そんなねぐらだった。
同級生の親が私をバイキンのように敬遠するのは当然だと、子供ながらに自覚していた。
なので、私は学校でも、同級生に溶け込めない子だった。
もう……、女子の人間関係というのは本当にクレイジーだ。
ほとほと疲れる。
なぜ一緒にトイレに行かなければならないのか?
なぜ一緒に昼食を取らなければならないのか?
なぜ一緒に着替えをしなければならないのか?
なぜいちいち派閥を作るのか?
なぜ発言するごとにマウントを取ろうとするのか?
なぜ都会からきた転校生に排他的に接するのか?。
生まれたときから社会から疎外されて生きてきた私には、これらの現象が一切理解できず、むしろ独りでいるほうがよっぽど楽だったような気がする。
また、その独りを楽しむようなスタンスでいると、罪人のように村八分にされるので、私にとって学生時代は黒歴史で、居場所のないホントの意味での地獄だった。
中学へ入って私の転落の人生が始まる。
第一の転落。
いわゆる勉強をしない子供だった。
塾へ行く意味も分からなかった。
親も教師も何も言わなかった。
教育指導を放棄されていた。
ネグレクトされている自覚や違和感はなかった。
ただ、放課後、暗い家庭に帰るのが嫌だったので、街や図書館を、、ぶらぶらぶらぶら、徘徊していた。
「勉強・進学というものが将来に与える影響」というものを全く認識していなかったのである。
浅はかだったとしか言いようがない。
みるみる成績は落ちて、結局、その学区で最低の偏差値40の公立校に墜落した。
公立の普通校というのが間違いだった。
勉強が出来ないなら出来ないなりに、せめて商業高校へ行っていればよかったと今でも後悔している。
商業高校で簿記2級を取っていれば、決算書を読めるくらいにはなっていた。
ミステイクだった。
今から勉強?。
得意科目は唯一歴史のみ。
せどりで上手くいっている今、また一から簿記や宅建なんて勉強できるかよ。
痛かった、この進路は。
高校は、私と同じような貧乏人の子供の収容所だった。
なんと、アルバイトが学校公認だった。
なんなら教師が世話してくれることもあった。
彼らにしたら、授業料を滞納されては困るので、未成年に労働をさせるのに後ろめたさはなかった。
私の家庭も、私がアルバイトをしなければ学費は出なかった。
入学後、ほどなく、担任の紹介で、ラーメン屋でアルバイトをした。
まかない目当てであった。
両親は食費が助かると喜んでいた。
夕食、毎日ラーメン。
毎日、油の塊を食う。
それでも太らないから若さってすごい。
このラーメン屋で、先輩アルバイトの大学生と初体験した。
とっとと捨てたかったので
ド下手で無理やりねじこまれてスゲー痛かった。
私の拳、テメエのケツの穴にブチ込んでやろうかと思った。
お互いちっぽけで青かった。
この大学生もウチの両親と同様、金に汚く、いつもデートは海で済ませて、その夜、車中でセックスして上がり。
今、振り返れば、私の高校三年間は路上カーセックスとコレステロールの塊だけだったような気がする。
1回も気持ちよくならなかったことだけは強く断言しておく。
そんな肉便器交際も、その大学生が就職するのと同時に終了した。
一方的に捨てられた。
理由は
「お前みたいな最低偏差値の学生と付き合っていると俺の履歴に傷がつく」
とのこと。
真剣に殺してやろうかと思った。
「いつか見返してやる」ではなく「今、殺したい」だった。
この失恋で、私は少し自分の進学について考え始めることになった。
なんとか大学に行けないものか?。
進路指導の教師に相談すると「無理だ」と即答された。
「気の毒だが、ウチの高校は進学目的の高校じゃないんだよ。高校卒業という免許を与えるだけの存在なんだ。進学のノウハウを知らない。氏名だけを記入すれば受かるような恥ずかしい大学もあるにはあるが、それだったらむしろ高卒の方がいい。無難に就職しておけ」。
そうキッパリ教師は言った。
これが現実だ。
親に相談すると、奨学金で行くなら構わないが、お前には返済できない、とこちらもキッパリ言われた。
確かにそうだ。
最低最悪偏差値の大学に行っても、ロクな会社に就職できない。
そんな薄給で奨学金など返済できるわけがない。
私はガックリため息をつき、学校の推薦で、大手自動車会社の部品製作零細孫請け工場に就職した。
これが第二の地獄の始まり。
工場っていうのが失敗だった。
せめて、事務や医療など、資格に繋がる業種へ就職すべきだった。
工場作業員、奴隷……。
本当に本当の奴隷。
もはや人権は無い。
人間が「使い捨て便所タワシ」のように消耗されていく。
また、使い捨てされてしかるべき人間ばかりだった。
とにかく私の工場は「訳アリ」の人が多かった。
前科者の刺青さんとか暴走族とかホスト狂いの借金風俗嬢とか、とにかくスネに傷持つ
そんな人間でも正しく生産ノルマを果たしていければいいのだが、私が社会へ出て一番、世の中というものに殺意を覚えたのは、
「
という概念だ。
これは私の造語なのだが、どういうことかと言うと、
例えば、作業員2人、AとBという人間がいるとする。
そして、それぞれに10個、計20個の部品を作るというノルマがあるとする。
そこで、Bに生産能力が無く、時間内に5個しか作れなくて、Aに生産能力がある場合、Aが15個つくり、Bは5個の生産のままで、黙認・許容されるという不条理な現象が生まれるということだ。
さらにそこへ、またまた、5個しかつくれないCという人間が入ってきた場合、これもまたAがCの不足分も含めて1人で20個作らなければならないという地獄絵図が描かれることになる。
おかしい。
工場長は、Aがどんなに苦しんでいても絶対に拒否させない。
使えるやつは燃えカスになるまでとことん使う。
そして、出来ない人間BとCには
そしてAに罵声を浴びせ、本当に奴隷のように廃人になるまでコキ使う。
そして最後の最後の
信じられるか?。
これが単純作業における不均衡労働だ。
絶対おかしいと思う。
Aが、工場長に、BとCの負担を課すのなら自分の給料を上げろと言っても絶対に上げない。
「嫌なら辞めろ」と言う。
「代わりはいくらでもいる」と言う。
ここでAは進退の判断を迫られることになる。
そう、このAは私。
出来るやつほど安い給料で働かされ
出来るやつほど残業させられ
そして出来るやつほど倒れるまで徹底的に使われる。
精神的なダメージも大きい。
出来ないやつは無罪放免され、出来るやつは生きる気力を
理不尽としか言いようがない。
心、壊れる。
そして、更に、その拷問で病んでいく精神に追い打ちをかけるのが税金……。
親がケンカしていた理由が分かった。
社会人になって、その税金の多さに、首を
消費税
所得税
住民税
自動車税
車検
ガソリン
厚生年金
健康保険
雇用保険
収入印紙
高速道路
任意保険の料率
公共放送の受信料などなど……
数え上げればきりがない。
形や表現が変わっても、これ、み~んな実質税金である。
手取り14万でこんなに国にむしり取られるのか!。
そりゃ親が一年中
社会に出るということは、すなわち、税金に追われるということだ。
この現実を叩きつけられると、もう、発想の暴力的転換しかない。
人間なんて大っ嫌いだ!。国なんて滅びろ!。
この不均衡労働と税金の問題は、私の人生観を決定的なものとさせた。
自分の裁量で自分の技術で自分の決断で、自分だけが儲けたい。
私はロシア主義でいこうと思った。
歴史を学ぶと、ロシアという国は外交において、Win-Winという関係を認めない。
自国のみの利益も認めない。
「相手が不幸になって自国が得をする」という関係においてのみ取引をする。
私も「これだ!」と思った。
私だけ利益を取って、私以外の人間はみんな不幸になれ、という考え方でいこうと決意した。
私は3年働いた工場を辞めた。
「あ、そう」。
これが工場長の最後の言葉。
いつか殺す。
3年間、レイプのような仕事をさせられて、退職金10万。
泣いた。
現実の厳しさを見せつけられた。
でも、貯金もない、失業保険は雀の涙。
早く仕事を探さねば。
社会に出て、よく周囲から「べっぴんさんやな」と言われることが多かったので、キャバクラが真っ先に浮かんだが、接客が壊滅的に苦手だったので
ならばアイドルになろうと思ったが、やはり笑顔が作れない。
私という人間に「愛想と笑顔」は存在しないのだ。
そうこうしていると、すぐに貯金が底をついたので、とにかく派遣会社に飛び込んで、とりあえずネット銀行の派遣事務に不時着させた。
ここが第三の地獄。
ブルータスお前もか……。
ここも不均衡労働……。
不正取引が疑われる入出金をコンピュータに入力させていくのだが、
私の隣のオバサンが、雪山登山でもしているのか、というくらいのっそりのっそり作業が遅く、またもやこのオバサンの遅延データを私が入力させられる羽目になる。
しかも、やはり、ギャラおんなじ。
当然オバサンとの人間関係が悪化する。
さらに追い打ちをかけるように、誰もやりたがらないたらい回し業務「ATM高額入金」の作業まで毎日やらされることに。
もう……身体、持たないよ……。
貯金も持たない……。
派遣社員は交通費が出ない。
働くだけ赤字になっていく。
チームリーダーの正社員Mという不細工女に徹底的にイジメられた。
そんなに私が気に入らないなら、派遣会社に言って私をクビにすればいい。
しかし、そうはしない。
「いいカモ見つけたなあ」とでも思っているんだろう。
私を酷使する。
残業も私だけ。
とことんイジメられた。
もう、人間はこりごり……。
早く世を捨てたい。
これが下級国民だよ……。
生きているだけで損をする。
私は派遣会社と掛け合って、契約を更新しないことを告げた。
派遣会社は慌てて「それは困る!」と拒否する。
例のM氏が私を必要としているとのこと。
そりゃそうだろう、こんだけ薄給で酷使できるんだから。
でも、ダメ。
もう限界。
派遣会社は、特例中の特例で、交通費を出してもいいと言ったが、
契約期間満了と同時に辞めてやる。
甘かった……。
工場よりキツい。
利益が足りない。
金が要るんだ金が。
稼ぎさえあれば、身体と精神はなんとか持つ。
しかし、金がないと
どんどん
でも、私は無い金を使わざるを得ない。
ストレスが溜まるから無謀な浪費をするしかない。
休日、数少ない友人と飲み会をし、セックス目当てに彼氏も作って上辺だけの性処理もした。
わずかな酒とセックスで一瞬だけ救われるのだが、貯金と体力が持たない。
すぐに風邪をひく体質になる。
病気になる。
治療費がない。
通勤、きつい……。
マイカー通勤したい。
そして不均衡労働から解放されたい。
そう、この不均衡労働……。
これが決定的。
なぜギャラが同じなんだよ!。
日本は解雇要件が高い。
アメリカのように「出来ない人間」を簡単に解雇できない。
そして
団体は個人を否定する。
責任の所在が曖昧だ。
だから不均衡労働などといういびつな労働状況が生まれる。
酒とセックスではムリ!。
しまいに派遣会社は「マイカー通勤OK」とまで言ってきたが、断固拒否した。
そんなに辞めてほしくないなら、初めから人を人として扱え、たわけ。
私は残りの3週間、ひたすら事務的にノルマをこなした。
最悪の気まずい人間関係だったが、やり切った。
私の契約終了と同時に、
おばさんは最後に
「アンタが辞めなければ私もクビにならなかったのよ」
と
「人類滅亡しろ!」と心の中で叫んだ。
もう、人に雇われるのは嫌だ。
絶対、人と関わりたくない。
自分で稼ぐ。
誰にも文句言われたくない。
自分の裁量で生きる。
私はネットでひたすら「起業」をキーワードに検索しまくった。
そしてやっと見つかったのが、今の社長が開催していたせどりセミナー。
今から約3年ぐらい前の2016年。
働き方改革で副業解禁が噂されていた社会状況から、「せどりバブル」を予測して社長が立ち上げたコミュニティだった。
北関東の汚ったないおんぼろ一軒家で、
壁一面、立体的に複数に張りめぐらされたパソコンモニターの部屋で、
社長は数名の仲間と「ジャングルせどり」をビジネス化しようと、
1日20時間ぐらい怒号を交わしながら戦略を練って働いていた。
社長の公式ラインはつっけんどうで、
「甲斐性のない人はお断り」
という謳い文句で、綺麗ごとを並べていた他のせどらーとは異質だった。
私は、逆に、これなら信用できると、電話で数分話したあとには、もう新幹線に飛び乗って、北関東の不潔事務所に飛び込んでいた。
「本当に来たの?」
と社長は苦笑していたが、
「弟子にしてください」
と私がブルブル
「好きにしろ」
と不愛想に言って、その日はとりあえずタコ部屋に雑魚寝させて泊めてくれた。
こうして週1回、中部地方から北関東まで、せどりの修行に、社長のもとまで通うことになった。
「辞めたきゃいつでも辞めれば」
これが社長の口癖。
今までの会社の管理者とは性質が違った。
実力があれば仲間に入れてやる、というプロスポーツ選手みたいな感覚だった。
これが私の独立心に火をつけた。
居酒屋と体育館の受付のバイトを掛け持ちしながら、地元でせどりを始めた。
全然利益取れなかった。
一ヶ月で5万。
食えない……。
いったい何が悪いのか分からない。
でも、時間と気持ちをせどり業務に掛けられていないのは明白だった。
社長とその仲間が1日20時間働いて、まだあの掘っ立て小屋である。
甘い世界ではない。
でも、理論上、株やその他の投資とは違って、少ない元手で利益がすぐに出やすい、つまり再現性の高い業種であることは、社長の解説で分かっていた。
労働時間が足りない。
この時点で出せる明確な結論はそれだけ。
だったら時間を作ればいい。
私はバイトを辞め、総ての人間関係を断捨離した。
数少ない友人
セックス目的の恋人
職場の関係者などなど、
人間からの一切の連絡を一方的に絶った。
足手まといな人間などは捨てていくべきだと、逆に、開き直ってスッキリした。
やはり私は人間が嫌いだ。
せどりに専業すると、たちまち一ヶ月10万の利益が取れた。
でも、これが限界。
これ以上はどうしても取れない。
一ヶ月10万という金額は、せどりを始めた人間が必ず初めにぶち当たる、プロの世界の高いハードルだ。
中部地方の片田舎では圧倒的に情報が足りない。
そう判断した私は、ついに実家を捨て、北関東の事務所のタコ部屋に住み込んだ。
2LDKに8人。
私が初めて訪れてから半年、本格的にせどりを始めようとする男たちが確実に増えていた。
女は私一人。
このタコ部屋に寝袋で雑魚寝する。
犯されるんじゃないかと、まともに眠れなかったが、そんな心配をよそに、みんなも早く
その姿を見て、私も総てを投げ打ってせどりに取り組むことができた。
さすが本丸。情報量が違う。
ここでアプリやSNSの具体的なテクニックを徹底的に仕込まれた。
一ヶ月ぐらいで私の利益はメキメキ上昇した。
社長の特訓は典型的なスパルタ。
決められた期間内に一定の利益を出さなければ夕食
しかし、社長自身も1日3時間ぐらいしか寝ないで必死でコミュニティを巨大な法人にしようとしていたので、その姿を見ていると、何だか期待を抱かずにはいられなくなって、私も必死に社長に食らいついた。
それでも一ヶ月50万の利益を超えることは叶わなかった。
これは直感的に、私の技術の限界で、これ以上は私一人の力では無理だと悟った。
何か、まだまだ「隠されたテクニック」があるに違いない。
そう
社長は交換条件として、私が、今後、コミュニティが法人化する過程で、
「世間の
と、こちらも正直に交渉してきた。
私はもう、実家も捨ててきて、行く所もなかったので、開き直ってこの条件をヤケクソで受け入れた。
そこから、目から
例えば、倉庫型会員制総合小売店「クスクス」での値札の見方とリサーチ。
「※のマークは次の入荷が無い」
「値段の一桁目が3円だったら今売れている商品」
「✕のマークが付いていたらジャングルで値上がりする商品」
「期間限定商品は初日にしか仕入れてはダメ」
「店舗に行く前には必ず本社のホームページを見る」
「展示品限りなのに店員に『買い占める』と耳打ちすると実は裏から在庫を出してくる」
などなど、数え上げたら切りがないほどの裏ワザを教えてもらった。
こんな裏ワザが、ディスカウントストアだったり古書店だったり電器小売店ごとに実に細かく研究されていて、それを、星の数ほどある商品ごとに駆使していくのだ。
これは
どうりで私と弟子仲間のつたない知識だけでは利益が出ないはずだ。
社長は
「絶対に他人に言うな」
「本物のライバルは増やすな」
「自分で自分の首を絞めるようなことはするな」
と私をいま殺さんばかりの目つきで言った。
正直チビッた。マジで怖かった。
しかし、私は脱皮した。
これを教えてもらって、ついに私は初めて月の利益が100万に到達した。
社長の事務所に最初に飛び込んで一年が経とうとしていた。
そして、2017年、ついに政府公認で副業解禁。
せどりバブルが始まった。
事務所は都心の一等地に移転し、コミュニティは株式会社に法人化した。
あらゆる手段、
セミナー
コンサルタント
合宿所
SNS
ユーチューブを駆使。
組織は巨大化し、せどり業界はビッグビジネスに変貌を遂げた。
2019年現在、私もコンスタントに月100万の利益を取ることができ、作業は外注にして、今では、会社の広告塔として、セミナー講師やユーチューバーや業界パンフレットのモデルとして、キラキラな上級国民に
会社から給料も出た。
ようやく安眠できる日々を獲得した。
毎日、塩ごはんで昼メシ代を削っていた下級工場作業員が、年間利益1,000万の上級国民に成り上がったのである。
贅沢もした。
ユーチューブ撮影のため、何回も憧れの海外に行った。
スイス
オーストラリア
ブルネイ
パリ
ドバイ
スウェーデン
そしてニューヨーク。
全部、漏れなくユーチューブにアップした。
表向きはセミナー勧誘目的だったが、本当の目的は、クソ工場長と腐れ派遣会社の連中に見せつけるためだった。
私のユーチューブはせどり界で反響を呼んだ。
そりゃ受講生増えたよ。
特に女の。
「私も
と30万出して受講しに来たよ。
沖縄から来た
みんなカモだ。
会社は大金持ちになった。
SNSって、ホント、めっちゃすごい。
当然、昔の工場の連中やネット銀行の行員から、そして元カレからも「会いたい」と連絡が来た。
全部無視した。
お前らは利益にならない。
今の私には、彼らは
自分の利益にならない奴は「正」ではない、「負」である。
「負」のモノに触ってはいけない。
たちまち腐れる。
絶対に落ち目の人間に関わってはダメだ。
株の格言で「落ちるナイフを掴むな」というのがあるらしい。
あの人間らはまさに触ると確実にケガする種類の生き物たち。
誰が会うかよッ、クソがッ。
みんな聞け!。
信じられるか?。
腐れ工場派遣が利益1,000万だぜ。
ざまあみろ。
そう、この「ざまあみろ」。
この「ざまあみろ」と毎日言える喜びなのである。
いや、「ざまあみろ」では治まらない。
「お前ら全員死ね」と言いたい。
人間関係からの解放!。
不均衡労働からの脱却!。
こんなに嬉しいことはない。
これからも私は利益を取り続ける。
明日からもまた新しい利益獲得の模索が始まる。
私には利益しかないのだから。
家族とはユーチューブ顔出しのときに絶縁していた。
(つづく)
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