第9話 進展デザイア(後編)
「私、蓮ちゃんと同じ高校に入ったときに、決めてたの。生徒会長になったら、蓮ちゃんに声をかけようって」
「そう、だったの?」
「蓮ちゃんとはクラスも階も違ったし、話しかけるきっかけ、なかったんだ。蓮ちゃん、放課後は友達と一緒だったから、お邪魔する勇気もなかったし」
(実際は、環とダラダラ過ごしてただけなんだけどな……)
「…………」
「思わず目標に願掛けしちゃった。もし、蓮ちゃんに忘れられてたらって思うと、怖かったんだ」
「忘れるわけないよ!」
「蓮ちゃん?!」
「そうだったんだ。それなら、私も早く声をかけてれば良かった。私も寂しく思ってたの。せっかく再会した幼なじみが、立派になりすぎて遠い存在になっちゃったみたいで」
「そんな……立派なんて、私は全然」
「アヤネちゃんが声をかけてくれた時、私は本当にびっくりした。再会できて嬉しかった。でも、こっちから話しかける勇気がなかなか出なくて」
(綺麗になったアヤネちゃんに引け目を感じてたのもあるけど、あの時、きっと私はもうアヤネちゃんのことが好きになってたんだ)
「そんなことないよ。蓮ちゃんが、遊びに誘ってくれた時、本当に嬉しかった……泣きたくなるくらいに」
「アヤネちゃん……」
(か、かわいい……どうしよう、雰囲気に流されて言ってしまおうか)
「アヤネちゃん……!私……!」
(言う! 言うぞ! 頑張れ! 頑張れ私!)
「私、アヤネちゃんと、ずっと仲良くしていたい、です……」
(私のドヘタレー!!!!!!)
(精一杯絞り出した言葉のつもりが、結構当たり障りのない感じになってしまった!!!!)
(この流れで言ったらそりゃ友達として……と取られるよね?)
(ここはもっとバシーンと告白したかったのに、とんだ日和ぶりだよ!)
「……はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
(ああ……アヤネちゃんの言葉が、優しいのが救いだ……)
(恋人としてのお付き合いに対してその返事だったらどんなに嬉しいことか……)
(ううん、焦るのはやめよう。今こうしてアヤネちゃんといられるだけで、私は幸せ)
「……ところで、蓮ちゃん」
(?!アヤネちゃん、少し近い……?!)
「やっぱり、今日は一緒に寝てもいいかな?」
「え、ええっ?」
「やっぱり、普段の枕じゃないと私眠れないのかも。仲良しの証に、ね?」
(あれ……仲良し宣言は、これはこれで成功……?)
「アヤネちゃんがいいなら……い、いいよ」
「わーいっ」
「?!」
(いや、近い近い近い! 腕と腕が、組まれて……っ)
「ふふっ、仲良しー」
(ああああああああアヤネさんんんん?!)
(あのお泊まりの日から、アヤネちゃんのスキンシップが増えるようになって正直しんどい)
(嬉しいけどどうしていいか分からなくて、しんどい)
(これは、進展、なのか……?)
(次に環に会うとき、何て報告しよう)
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