第7話 進展デザイア(前編)
(真っ昼間の駅は賑やかだなあ。アヤネちゃんって、結構離れた駅から通ってるんだ……)
「蓮ちゃーん! 久しぶり! 乗り換え、迷わずに来れたかな」
「あ、ひっ、久しぶり! 全然大丈夫!」
(ああ白ワンピースのアヤネちゃん……私の夏は早くもクライマックスを迎えています)
「……あれ、アヤネちゃん、荷物多いんだね」
「これは夕食に食べようと思って、さっき、地下でお寿司とかいろいろ買ったんだ。蓮ちゃんって、今でも嫌いな食べ物、ない?」
「う、うん、私、何でも食べるのが取り柄だから」
(そういえばこの前、環にも褒められたんだったな。アヤネちゃんも覚えててくれたのか。なんか恥ずかしい)
「わ、私も手土産に、パティスリーオトギのケーキを。この前もらったラバストのこともあるから、もしかしたら足りないかもしれないけど」
(ちなみにあのお揃いのラバスト、私は毎日眺めてます)
「わー、そんな気を使わなくても良いのに。オトギ、美味しいよね。学校の近くのケーキ屋さんの中では一番好きだなぁ」
「種類もすごく多いよね」
(アヤネちゃんの一番気に入るものがどれなのか迷いに迷って、30分近くもショーケースを眺めてたなんて言えない)
「食べるの楽しみ。ありがと、蓮ちゃん」
(ああこの笑顔、この笑顔だけで私は報われた……ありがとう……)
「もう薄っすら外が暗くなってきたね。カーテン閉めよっか」
「そうだね」
(午後から集まって、アヤネちゃん家に向かって、他愛のない話をして……)
(アヤネちゃんおすすめのアニメの劇場版を見て、おやつ食べて、夕方のアニメを見て……)
(アヤネちゃんが用意してくれたお惣菜を食べて、またのんびりと話を……って)
(これいつも通りの友達同士の集まりだー!!??)
(いや楽しいけど! すごく楽しいけど! そうじゃなくて!)
(私は進展を求めてお泊り会に臨んだんじゃなかったの!?)
(というか、友達同士ってどうやったら進展するの!?)
(その場の雰囲気だけで何とかなるって考えてた私が甘かったのか、何かしないと何ともならないが!?)
「そういえば、蓮ちゃん」
「ん? な、なに?」
「お風呂、どっちが先に入る?」
「え」
(お……お風呂)
(アヤネちゃんの…お風呂)
「…あのね。うちのお風呂、けっこう広いの」
(アヤネちゃんの素肌……って、や、何を考えて)
「湯船に二人くらい浸かっても、余裕なの」
(そ、そうだよ、こんな時のためのお泊まり練習だった! 環の時はどうしたっけ……)
「そ、そういうの、すごくお泊まり会っぽい……って思わないかな」
(環のときは、えっと……覚えて……ない……? 私、半分寝てた、から……?)
「蓮ちゃん、良かったらお風呂いっ……」
『プルルルルルルル………』
「!?」
「あ、で、電話だ。ごめんね蓮ちゃん、ちょっと出てくるね」
(……でん、電話? 助かった、のか。アヤネちゃんと一緒にお風呂に入ってるなんて想像したら一気に意識が白くなって……ううっ、私、こんなんで進展とか望んで大丈夫かな。情けない)
『……もしもし。……ママ? 大丈夫だよ、ご飯もちゃんと食べたよ。鍵? 大丈夫だよ』
(アヤネちゃんが使った直後のお風呂を使うなんて、理性が持たなそうだし、かといって私の残り湯をアヤネちゃんに使われるのもなんだか気恥ずかしい……究極の選択……)
『……うん。うん、ありがとう。おやすみなさい。はい、ママ』
(……あぁ……私って、ド奥手だったんだな。いや知ってたけど……)
(もう、ママったら。どうしてこのタイミングで……せっかく、勇気出そうと……私……)
((本っ当、片想いって、難しい!!))
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