第3話 全力アタッカー

……


『えー、うそぉー』

『本当だって、あたしバレー部に知り合いいるもん』

『あーでも納得かも。それで部活辞めちゃったんだ、加村さん』

『そーそー。フラれた時のリスク考えなかったのかねー』

『ね。て言うかさー』



『女同士って!って感じだよね』

『あはははは!』









『先生、部活って……絶対入らなきゃいけないんですか?』

『はい、そういう決まりです。加村環さん、何が特別な事情が?』

『い、いえ、そういうわけではないのですが』

『部活も大事な学校生活の一部ですから、必ずどこかに所属してもらう必要があります。あなた確か、体育の体力テスト、トップでしたよね』

『はい。だけど運動部ということでしたら、今は考えていなくて……本当に、その……』

『……あまりお薦めしませんが、文化部にはあまり活動をしていない部があるそうですから、どうしてもという場合はそこに籍を置きなさい』

『は、はいっ。ありがとうございます』





『部活希望……放送部……っと。これで、良いかな……』









「おはようございます、先輩」

「おはようって、今もう放課後だけど」

「業界人みたいで良いじゃないですか。それより私、昨日すごく怖い夢を見たんです。慰めてください」

「子供みたいなこと言わないの」

「冷たいです先輩。良い歳した女子高生が、今ここで駄々をこねますよ」

「はいはい。やっぱり子供だ」

「ふふっ……撫でられた……ありがとうございます。ところで先輩、最近生徒会長とのお話を聞いてないんですが、聞いちゃっていいですか?」

「あ、ああ、それなんだけどね……」

「はい」


「あれから週末はよく一緒に遊ぶようになったよ。良いお友達! 良いお友達としてね! 確かに、あの子とまた当たり前のように遊べるようになって嬉しいには嬉しよ!? ただ、やっぱり、私は友達止まりじゃ物足りない……」

「何だかんだで初デートから3ヶ月ですか。そろそろ夏休みになってしまいますねぇ」

「一緒にいる間は楽しすぎるから、あっもうこのままで充分だわって思うの。こう、幸せのままずっと居たいって。でも、解散直後になると急に寂しさが襲ってくるというか、どうしてあそこでもっと押せなかったんだろうとか、後悔ばっかで」


「先輩……」

「家に帰ってもずっと悶々としてて。一緒に遊ぶようになってから以前とは比べ物にならないくらい、あの子のことばっかりずっと考えてる……」

「……先輩。私、考えました。この夏休み中にチャンスを作るんです」

「な、夏休み」

「はい。夏休み。普段の学校生活の延長から離れて、特別感ただよう時間を味わえる私たち学生の特権です。進展のチャンスを作りたいならうってつけの期間だとは思いませんか」


「そ、そうか。ありがとう環、今ので背中押されたよ。早速あの子の予定を聞いてみることにする」

「あ、先輩のホーム画面、ちゃっかりツーショットにしてます」

「良いでしょ、ついこの前撮ったの。えーと、アヤネちゃんお疲れ様。夏休みって予定ってどんな感じ?っと」



「生徒会長さん返信早いです」

『私は最初の一週間だけ家族旅行で、あとは暇してると思うよ。夏休み中も絶対遊ぼうね♡』


「ああああアヤネちゃんからのハートマーク……!はぁ……ありがたく頂きました」

「先輩、生徒会長のメッセージ読むときいっつもそんな顔してるんですか……」

「えっ。環ごめん、いま何か喋ってた?」

「何でもありませんよー」

「あっ、吹き出しがもう1つ……追加のメッセージみたい」


『そういえば、パパ達はその旅行のあとママの実家にも寄るみたい。しばらく家に私ひとりでお留守番なの。蓮ちゃんさえ良ければ泊まりに来ない?また詳しいことがわかったら連絡します』



「こっ、これは……」

「先輩。ネギです。ネギが鴨に背負われてやって来てます」


「どっ、ど、どうしよう環いいいい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る