第2話 交錯エモーション

れんちゃん! 早いね、もう来てたんだぁ」

「あ、アヤネちゃん。わ、私もいま来たとこ」



(うわ、本当にデートみたいなシチュエーション!)



「蓮ちゃんに誘ってもらえるなんてすごく嬉しい! 今日はよろしくね」

「あはは、こっちこそ」


(え、笑顔可愛すぎでしょ……何これ天使……?)


「えっと、じゃあ、まずは今日のメインイベントの原画展まで行こうか」

「うん。結局私の行きたいとこ優先してもらっちゃって、ありがとね」

「ううん、私もこのアニメ知ってるからちょっと興味あるし。というかアヤネちゃん、今でも漫画とかアニメとか見てるのは意外だったかも」

「そうかな。いまも私の休みの日の過ごし方なんて、それくらいだよー」


(というかこのアニメ…メインヒロインがアヤネちゃんに雰囲気似すぎてて一時期ドハマりしてたんだよなあ。そういう目で見てはいけないと思いつつ、主人公の女の子との百合っぽいシーンは熱かったし)


「あのね、それでこのアニメなんだけどね、主人公の子がなんだか蓮ちゃんに似てると思うの!」

「ィフバラヘッァ!!」

「ど、どうしたの? 喉だいじょうぶ?」

「う、うん……大丈夫なんだけど、その、今のってどういう」

「蓮ちゃん、小さいころ私のことよく守ってくれてたでしょ? ついつい、その時のこと思い出しちゃって」

「あ、うう……覚えててくれてるのはその、嬉しいんだけど……それはもうだいぶ前の話で。あの頃はラスボスだの何だの言われてたから今となっては何か恥ずかしいし」

「うーん、蓮ちゃん可愛いのになぁ。子供の頃も可愛かったけどやっぱり今の蓮ちゃんも大人っぽくなってて凄く良いと思うよ!」

「えっ」


(何これ何これ。オトナッポクナッテテスゴクイイ? 新種の昆虫の名前か何か?)


「ねっ、あの信号で左じゃないかな?」


(あああああアヤネちゃんの指が私の肘に添えられたああああ!)


「楽しみだねー。混んじゃってるかな」


(こ……こんなことでいちいちドキドキしちゃう……アヤネちゃんに他意があるわけ無いのに……あああ私ばっかり緊張してバカみたいだこの調子で大丈夫かな……)









「えへへー、とっても満足しましたー」

「アヤネちゃん、グッズほぼコンプする勢いだったね……」

「だって、どれも可愛くて」

「まあ、最近のグッズは確かに可愛い」

「そうなんだよね! じゃーん、そしてこれは蓮ちゃんとお揃いにしようと思って買っちゃいました」

「ええっ、そ、そうなの?」

「うん。変身衣装モチーフのラバストだよ。主人公のは蓮ちゃんに。私は、この子が推しだから……ヒロインのを」

「ヒロイン……っ?いや、そうじゃなくて、さすがに貰いっぱなしは悪いよ。何か買って返すから」

「いいの。私がお揃いにしたかったの」

「あ、ありがとう……大事にするね」

「えへへ、やったぁ。私さっそく家の鍵に付けちゃおうっと」









「……それで、その後はお茶して夕方にそのまま解散した。これがそのラバスト」

「仲良しすぎるじゃないですか、先輩!」

「そ、そう……?」

「今の関係のどこに不安要素があるんですか!順調そのものじゃないですか!」

「わ、私もこんなに幸せで良いのかと思ったよ。でも……」

「でも?」


「今回、半日一緒に過ごしてハッキリわかった。私があの子に最終的に求めるのは、やっぱり恋人同士の関係なんだよ……ほら、わかるでしょ」

「それはやっぱり、生徒会長とイチャイチャしたいってことですか?」

「その通りだけどそんなに堂々と言われると照れだけで軽く死ねる……」

「私は可能性あると思うんですけどねー」

「そうやって期待して、駄目だったらもう立ち直れる気がしない……かと言ってこのままお友達のまま仲良くしていてもどこかで限界が来そう」

「苦労しますね、先輩」

「流れでまた来週末も遊ぶ約束をしちゃったから、次はどんな気持ちで会いに行ったらいいのか……」


「うーん」


「駄目だ、考えすぎて頭パーンってなりそう。最終下校時間も近いしもう帰ろうか、この話はまた今度でいい?」

「そうしましょうか」

たまき、あんたが相談に乗ってくれて助かる。ありがとう、こんな形でバレるとは思わなかったけど、良い後輩を持ったなあ」

「先輩、そういうのナシですよ。私も楽しんでやってるんですから」

「それはそれで複雑だけど。じゃあ、また明日」

「はい、さよなら先輩」







(先輩に似た主人公、ねぇ)



(……私もそのアニメ、見てみようかな)

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