第8話 北の大ターミナル
結局のところ、一本後の特急の時刻まで名寄近辺を観光する方針に切り替えた。従って翌日の名寄訪問を前倒ししたことになる。少ない列車本数による制約は多いが、予定していた場所は何とか訪問できそうだ。これから先、旭川、稚内方面の天気は良好であり、積雪による支障はないと判断した。そこでエアポートが札幌駅に着く手前で、筆者は宿を手配した。もう後戻りはできない。
北の大ターミナル、札幌駅。数年ぶりの訪問にもかかわらず、記憶と何一つ違うところはなかった。独特のチャイム、どこか懐かしさを感じさせる自動放送、広い構内。何一つ違わないが故に、訪れなかった数年の間に変わってしまった自分を省みてしまう。毎年訪れていたあの頃、筆者はまだ学生で、半ば自由の身であった。その気になればいつだって旅に出られるし、何かを成す時間があった。こんな身分が永久に続くような気さえするほど、視界は開けていた。
そんな札幌駅だが、歩くうちに工事の案内に出会った。北海道新幹線の札幌延伸という来るべき未来に向け、この地も変わりつつあったのだ。この次来る時は、また変わってるんやろな、と思った。
筆者と札幌駅。ともに新たな道へと分岐を渡り、軌道は遠ざかり、いつしか見えなくなる時が来るかもしれないけれど。
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