第7話 立案の心得

 計画変更にあたって考慮すべきことは、実に数多く存在する。まず大前提として、旅行で最も大事なことは「無事に生きて還る」ことである。だから例えば、災害級の大雪が予想され列車もバスも運休しそうな地域の訪問には注意が必要であるし、旅の目的に反しない範囲で、リカバリーの選択肢が多い地域に留まることも大切である。先述の通り計画が未確定のまま快速エアポート号でひとまず札幌に向かったのも、その一つの実例である。


 さて快速エアポート号に揺られながら、筆者は①訪問地域とその順番、②宿の選定、③観光する場所 の優先順位で計画を練った。無論これらは相互に関連し合っているから、実際には①~③全てを並行しながらの検討だったが、あくまで感覚的な重みづけはこの順番ということだ。


 年末年始のことで博物館などは大抵閉まっているし、さすが北海道、冬季はずっと閉まっている施設も多い。ということは、その地域の滞在時間は短めにして他の地域に振り向けた方が良い、という考え方ができる。その上で、列車やバスの時間を時刻表で見て、訪問しやすい順番や終電までに移動できる範囲、翌日の移動を待ち時間なく始められる駅などで条件を絞り込んでいく。そして最終的に、A市の次にB町を訪問して、C村で夕食を取ってD市に泊まる、という計画をまとめるのである。


 これだけの条件があると、計画をまとめるのは難しそうに見えるかもしれないし、実際難しかった。しかしだからこそ、筆者は少しでもまとめやすくする努力をしていた。実は、そもそも宿を手配してこなかったのである。

 通常の限界旅行であれば、計画が固まった時点で宿も確定させるのだが、今回は冬の北海道。しかも先述の通り初日の乗り換えに少々不安要素がある。そこで万が一大規模なトラブルが生じても計画を見直しやすいよう、宿を押さえずにいたのだ。無論満室になっては困るから、旅行サイト等で空室状況は時々確認した上でのことである。旅慣れると、どうも生き残る戦略が上手くなるような気がする。何事もこれぐらい先を見据えてできるようになりたいものだ……


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