第6話 瓦解した計画

 この遅れがどうまずいかを理解していただくために、ここで旅の計画を軽く紹介しよう。


 一日目は関空から飛行機で北海道入りした後、札幌、旭川を経由し稚内へ向かう。二日目は稚内を観光し、名寄まで南下する。名寄を観光した後、札幌で宿泊する。三日目は札幌・小樽を観光した後、夕方の飛行機で関空へ戻る。


 続いて、今日すなわち一日目の計画をもう少し見ていこう。


 関空九時ちょうどー(ピーチMM一〇五便)ー新千歳十時五十分着、新千歳十一時六分発ー(快速エアポート百十一号)ー札幌十一時四十五分着、または新千歳十一時十八分発ー(快速エアポート百十三号)ー札幌十一時五十七分着、札幌十二時ちょうど発ー(特急ライラック十五号)ー旭川十三時二十五分着、旭川十三時三十五分発ー(特急サロベツ一号)ー稚内十七時二十五分着。以上である。待ち時間のないスマートな計画である。時刻を漢数字で書くと非常に見づらいが、将来本にすることを想定し、縦書きへの変更を前提にしているので仕方ない。


 この計画の中で、航空券を予約する時点で怪しいと睨んでいたのが、新千歳での乗り換えである。定刻で着いても十六分しかないのだ。空港と駅が近いとはいえ、JR線のきっぷを買う時間を考えると少々怪しい。それに冬の北海道であるから、雪で遅れることも充分に考えられる。

 定刻より十五分遅れたと仮定して、一本後の快速エアポートに間に合えば、札幌には十一時五十七分、五番のりばへの到着である。旭川行きの特急ライラック十五号は同じホームの向かい側六番のりばから出発するから、三分でも何とか乗り換えられるだろう、とみていたのである。


 しかしながら、結局のところ機体が搭乗口にたどり着いたのは十一時二十分頃、定刻より三十分遅れであった。六分発どころか十八分発の快速エアポートすら逃したため、大規模な計画変更の必要性がこの時点で確定した。


 と、ここまで読んだ読者の中には「一本後の列車に乗れば良いじゃないか」と思う方もいるであろう。その疑問は全くその通りである。しかしここに、試される大地の難しさがあるのだ。旭川以北、稚内まで走る特急列車は一日三往復しかなく、一本後の列車が来るのは何と六時間半後なのである。一本後の特急サロベツ三号に乗ると、稚内には二十三時四十七分の到着となってしまう。


 何にしても、まずは鉄路の起点である札幌まで向かおう。何かあった時に、列車本数の多い札幌近郊にいれば柔軟に対応できるかもしれないのだから。札幌までの三十分余りで計画を練ろう。そう考え、とりあえず目の前の快速エアポート号に飛び乗った。

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