第4話 離陸

 離陸十五分前に搭乗手続きが開始され、後半席の筆者は早めの搭乗となった。シートベルトを締めた後、周りの様子を観察してみた。久々の搭乗なのか、後ろに他の乗客を待たせたまま通路で荷物をしまう人がちょこちょこ見られた。「一旦席に入ってから荷物をしまいましょう」みたいな定時運行のポイントを優先搭乗の前辺りで流すと、もうちょいスムーズに乗れるんじゃないだろうか。

 帰省の時期とあって搭乗率は八割ほど、荷物棚はほぼ満杯になった。定刻十分遅れでドアが閉じられた。


 ここから巡航までは、何度乗ってもワクワクする。第一に非常用設備の案内だ。安全のしおりは毎回読むし、客室乗務員の実演も刮目かつもくしている。非常時に撮影するなとか荷物を持つなとかいった注意は、ちょっぴり暗澹あんたんたる気分になるけれど。これだけ言ってもやっちゃう人が実際いるんだろうな。


 エンジンが始動し、機体は滑走路に向け走り始めた。滑走路以外の地面はわりとがっくんがっくん揺れる。実はあれ、夏場の膨張を念頭に置いて、コンクリートブロックの間にあえて隙間を残しているとかいないとか。狭い窓から外を見ても今どこにいるのか分かりにくいけれど、航跡を追えるアプリFlightrador24で使用滑走路や経路を予習しておいたので、この日はイメージしやすかった。


 ベルト着用サインが再度点灯し、機体は西向きの滑走路に進入した。いよいよ離陸である。

 エンジンの推力が増し、体が後ろに押しつけられる。こういう時、物理の基本問題を思い出す。数秒間の滑走の後、機体は地上を離れ、あっという間に雲の上まで昇ってしまった。それから間もなく、淡路島の手前で旋回し、針路を北東に取った。

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