episode.3 The lily shrivels up in the shade

 地下室はジメジメしていて不快だ。

 湿気が服に染み込んできそうなくらい、服が肌に張り付いている。服のところどころに赤茶色のシミができていて、ロウみたいに肌にくっついている。体を動かすとそれが取れて、チクリと痛みが走る。それでもさっきの痛みよりはまだマシだった。

 腕や脚を、指でなぞってみる。大きな蛇が這っているみたいな腫れができているのが分かった。そうして動いているうちに、背中が鋭く痛んだ。背中にベタベタと張り付いた服がこすれて、余計に痛い。ものすごく寒い。傷は熱いのに、床につけている手足からどんどん体温が奪われていく。

 あまり動きたくないけれど、なんとか牢のすみっこまで這っていき、背中を刺激しないようにそっと壁に寄りかかった。鞭のうなる音が、頭の中で響き続けている。体がまた震えた。寒いのではない。痛いのではない。怖くて、怖くて、体が勝手に震えてしまう。


 悪女共の悪事のクズ箱。使い古されたその成れの果てが、今ここにある。


「今日もにぎやかだったわね。だって今日のアビー先生は、とってもだもの」


 向かいの牢に目を向けると、手に歪な人形を抱えたレイラが、こちらを見つめていた。長く日の光を浴びていないレイラの顔は、薄暗い地下室でも一層白く、浮かんで見える。


「あんなに大きな声をあげて。アビー先生が羨ましいわ。楽しい遊びがあるなら、レイラにも教えてほしいのに」


 夢を見るように目を輝かせているレイラの足元には、同じような沢山の人形たちが、死骸みたいに転がっている。


「リリー、見て、このお人形。ジェーンよ。やっとかんせいしたの」


 その名前を聞いて思い出した。最近入学したと思ったら、病弱だったために亡くなってしまった子の名前だ。

 レイラはわたしの反応を待っていたけれど、答えたくない。わたしはただ天井を見上げて黙っていた。応じたところで、レイラとまともに会話ができる人は、先生以外はいない。レイラがわたしに飽きるのを待ったけれど、話を止める気配はなかった。


「よくできてるでしょ? 細い枝みたいなウデだったわね。それなのにお顔は、満月みたいにまん丸で赤くてね――」


 手に持っている気色の悪いお手製人形を見ても、ジェーンがどんな子だったのかは思い出せない。それよりも早く黙ってほしい。レイラは自分の話をきいてくれると分かると、延々と同じような話をする。音を外した子守唄のような調子で、ペラペラペラペラと喋り続ける。


「そうだわ、学校ごっこをしましょうか。アビー先生もリリーもまだ作ってないけれど、お人形さんはたくさんあるわ」


 そう言ってレイラは不気味に体を揺らしながら、人形をかき集め始めた。わたしのことを子供だってあの三人組はよくからかってくるけれど、レイラの方がよっぽど子供っぽい。これでもレイラはわたしより一歳年下だ。わたしでも流石にもうお人形遊びには飽きる年齢になってる。それもとっくの昔に。


「さぁみんな、集まって。ミリー、あなたが先生になるのよ。マーガレット先生、今日は生徒をやって。それからデイジー、あなたは――」


 あれが日々繰り返されている。わたしが知る限り、彼女が来てから、ずっと。あれをきいていると、こちらまで頭がおかしくなってしまいそう。


 今はいない生徒や先生の名前をつけた醜い人形たちに囲まれているレイラに、背を向けるようにして寝っ転がった。背後からはレイラが何度も何度も人形たちの名前を呼ぶ声がきこえる。


 わたしがもし、この寄宿学校をレイラより先に出ることになったら、わたしを模したあんな不気味な人形が作られるのかしら?

 あの人形になって毎日延々と同じ学校ごっこをさせられるのかしら?


 考えたくない。寒くても、痛くても、とにかく眠ってしまいたい。わたしはタオルケットを頭から被った。そして精一杯体を丸めて、どんな恐ろしい考えも、声も入って来ないようにした。



「バラ、バラ、バラ、バラ、バラ、バラ、バラ……」


 レイラの呟きと、人形をぶちぶちと破く音で、浅い眠りから覚めた。音がやけに響いていて、どれだけ寝返りを繰り返しても眠れる気配がない。今になって空腹も、眠気の邪魔をしてきた。朝から何も食べていないから当然だ。


 心許ない一本のロウソクの明かりが、消えようとしている。それが陰気な地下室の、最後の希望だというのに。このロウソクの火が消えたら、わたしは本当に独りぼっちになる。そんな気がする。そんな気がするだけなのだけど……。

 ロウソクはそんなことを知る由もなく、小さな火を頼りなく揺らしている。

 地下室が真っ暗になることはない。レイラが酷く暗闇を怖がって暴れるからだ。だからアビー先生は細心の注意を払って、レイラの部屋から明かりがなくならないようにしている。けれどわたしの部屋は違う。わたしのロウソクの火なんて、誰も気遣ったりしない。

 初夏とはいえ、真夜中の地下室はひんやりと冷えている。わたしはただ消えそうなロウソクの火を見つめているしかなかった。体が小刻みに震えているのは、寒さのせいだけではないかもしれない。


 こつんこつんと、慎重な靴音が部屋の外からきこえてきた。アビー先生の足音ではないのはすぐに分かる。でも誰かは分からない。


 もしかして嫌がらせをしにきたのかしら? あの三人組のうちの誰かだったらどうしよう……。寝ているフリをした方が良いかもしれない。


 耐えるように息を潜め、扉を背にしてじっと身を横たえていると、がちゃりと格子を掴む音がした。


「リリー」

「ローザ!」


 ただ一人のルームメイトの声にすぐに飛び起き、持ってきてくれた新たな明かりにすがるように駆けつけた。はやる気持ちを抑えつつ、わたしはなるべく声を潜めて話した。


「見つかったら、あなたまでここに入れられちゃうわ」

「大丈夫、みんな寝静まってるから。抜け出すのは得意なんだ。それにもし入れられても、リリーと一緒にいられるからね」


 ローザはそう囁いた。人差し指を唇に当てて、あどけない子供のように微笑んでいる。


「体中傷だらけじゃないか。……すごく痛そうだ。布を持ってくればよかったね。今取ってくるよ、ワタシが拭いてあげる」

「待って」


 わたしは階段へ向かおうとするローザの寝間着の裾を、引っ張って止めた。


「傷は大丈夫。それよりも……そばにいてほしい」

「わかった、そうするよ」


 そう言ってローザは微笑んで、できるだけわたしの近くに座った。


「お腹が空いているだろう? これしか持ってこれなかったけど、食べるといいよ」


 そう言ってローザは懐からパンを取り出した。わたしはお礼を言ってパンを受け取り、すぐに食べた。夕食中、みんなにバレないようにパンをポケットに隠すローザの姿が、頭の中で思い浮かぶ。口に運んでいるうちに、自然と温かい涙が零れてきてしまった。


「こんな暗い場所で心細かったんだね。もっと早く来ればよかった……ごめんよ」


 そんなことで謝らなくても良い。ここに来てくれたことだけで、胸がいっぱいになる。


 そう言いたかったけれど、わたしの口から出るのは嗚咽だけだった。ローザは格子の間から手を伸ばして、よしよし、と優しく言いながら背中をゆっくりさすってくれた。温かい手の体温が背中越しに伝わって、震えていた体が徐々にほぐれていく。その温かさを感じているうちに、気分が落ち着いてきた。

 レイラの声はいつの間にか止んでいて、代わりにかすかな寝息がきこえる。


「リリーが良ければ、朝までここにいようか?」

「本当はずっといてほしいくらいだけど……それで見つかってルームメイトを変えられるのは嫌よ。だから、わたしが眠るまででいいから……何かお話をきかせてちょうだい」


 そう言いながらわたしは、そばにあったタオルケットをたぐり寄せ、膝に乗せた。


「いいよ。じゃあ、とある男の子の話でもしようか」

「ローザのお話会ね、楽しみだわ」


 わたしは壁に背中を預けて、話をきく体勢をしっかりと整えた。


「そんなに張り切ってちゃ、眠れなくなるよ。大した話じゃないから。力を抜いて」


 ローザはくすりと笑って、鉄格子の間から手を入れて、わたしの左手を優しく包み込んでくれた。



 それほどとおくないむかし、大きな町に小さな男の子が住んでいました。

 その町は、とても大きいけれど、空はいつも灰色で、雨ばかりふっています。

 男の子にはお父さんもお母さんもいたし、十分にくらせる家もあったけれど、今のくらしに満足していないようでした――



 ローザは女の子とは思えないくらい落ち着いた低い声で、語り掛けてくれた。この声は聞いていて、とても心地が良い。こうして優しい声をきいていると、寄宿学校に来る前の幼かった頃を思い出す。あの頃の記憶はあまりないけれど、こうして寝る前に、宝物にしているあの絵本を読んでくれた人がいた。


 あれは、父親だったかしら? 母親だったかしら? 


 ……どうしても思い出せない。だけどそんな思い出もまた、わたしの胸を満たしていく。



 男の子は旅に出ることにしました。自分をいじめるような人もいない場所、そこをめざして。

 それから気が遠くなりそうなくらい、長くて、つらい道を、一人で歩きつづけました。

 その先に、じぶんがほしい何かがあるわけではありません。

 けれど男の子には、予感がありました。

 何か自分を変えてくれるものがまっているかのような、大きな予感が――



 ローザの穏やかで音楽のような言葉の連なり。傷ついたわたしの手を包み込んでくれる白くて繊細な指。そこから伝わる熱は、まるで魔法を帯びているみたいだ。ローザの全てが、わたしを眠りの世界へいざなってくれた。だからお話の男の子が、運命の女の子を見つけるところから先の話は、きくことができなかった。


 わたしが次に目を覚ましたときには、ローザはもういなかった。けれど握ってくれた左手は、まだほんのり温かい気がした。



「昨日はとんでもない災難だったね」


 授業終わりの午後、中庭のヤナギの木の下でローザと並んで座っていた。ようやく地下室から解放されたときの日差しは、一段とまぶしい。少し離れた所で、エミリアが相変わらずのキーキー声で、トロいだの、もっと強く投げろだの、とジェシカたちに文句を言っている。


「ええ、そうね……」

「あれはリリーの仕業じゃないんだろう? 証明してあげたかったけど、肝心な時にその場にいなかった。何もしてあげられなくて、本当にごめん……」

「ローザは何も悪くないわ! あそこでちゃんと言い返せなかったわたしがいけなかったの。それにローザは、パンを持って地下室まで来てくれたでしょ? パンを持ち出したことも、部屋を抜け出したことも、他の子たちとか先生に見つかったら生易しい〈救済〉じゃ済まないのに……。それでもローザは来てくれた。わたし、本当に嬉しかったの」

「そう言ってもらえるのはありがたいけど……やはり何かしてあげたいね」


 それからローザは決意したように立ち上がった。


「どこに行くの?」

「ちょっとした探偵ごっこさ」


 ニッと白い歯を見せて笑うローザは、新しい遊びを思いついた子供みたいだ。時々ローザは、こういう無邪気な顔をする。


「アテがあるの?」

「まぁね。申し訳ないけど、リリーはここで待ってて。すぐ戻るよ」


 そう言い終わるや否や、ローザは三人組とハンナの輪の中に加わっていった。ローザは何か話すと、四人はボール遊びを止めた。かと思うと、ローザ以外の生徒たちが庭に散り散りに走っていく。ローザは目を隠しながら、よく通る低い声で、ゆっくりと数を数え始めた。三十まで数えると、ローザは庭の端へと駆けていった。

 あれのどこが探偵ごっこになるのか、全く見当もつかない。取りあえず、ローザを待っているしかないので、茂みからこっそり絵本を取り出して読んでいることにした。


 それから五分も経たないうちに全員がローザに見つけ出され、中庭の中心に集まっていた。何を話しているのかはちゃんときこえないけれど、みんなすごく楽しそうだ。ローザが何か冗談を言ったらしい。みんながドッと笑った。ハンナがあんなに笑うのはいつぶりだろうか。そうして笑い合うローザの姿を見ていたら、何だかモヤモヤした気分になった。


 ローザはここに来て、まだ一週間程しか経っていない。なのに他の子たちにあれだけ好かれている。そのうちまた、わたしは前と同じように独りぼっちになる。いつかローザもエミリアの言いなりになって――


 ああ、ダメ。わたしったら、ローザを疑っているみたいじゃない。


 これまでに体感したことのないドロドロとした感情に、わたしは身を震え上がらせる。よくない考えが、頭の中をグルグルと回り出した。


 早く戻ってきてほしい。


 一分でさえも、わたしにはとても長く感じられた。


「リリー!」


 わたしの名前を呼びながら走ってくるローザの声でようやく我に返った。そして密かにホッと、胸を撫でおろした。


「ああ、ローザ。探偵ごっこはしてこなかったの?」

「犯人が分かったよ」

「え、もう?」


 当たり前のことのように、ローザは言った。


「遊んでいただけじゃなかったの?」

「ああ、かくれんぼの最中にハンナに聞いたんだ。そうしたら、昨日見たらしいよ。ボールを持ったジェシカが、折れたバラのそばにいたのをね」

「なんですって? でもどうして言ってくれなかったのかしら……?」

「言えないだろうね。あの三人組の仕返しを考えると」


 確かにそうだ。ハンナがここに入学したばかりの頃は、わたしをよく気にかけてくれた。しばらくは三人組の仕打ちから庇ってくれていた。けれど、ハンナに仕打ちの標的が切り替わると、いつしかあの三人組に黙ってついていくようになった。時々心配するような声を掛けてくれることもあるけど、自ら災難に飛び込んでいくことをするような子ではない。


「でもどうしてハンナが知ってるって分かったの?」

「リリーがアビー先生に連れて行かれた時にね、ハンナの様子がちょっとおかしかったんだよ。いつもよりちょっと落ち着きがないように見えたんだ。確信は無かったけどね」


 ローザは考えてくれていたのだ。傷ついたあの時のわたしのことだけじゃない。わたしへの疑いを晴らすためにも。


 真犯人が分かったのならば、やる事は一つ。わたしは絵本を置いて、勢いよく立ち上がった。


「わたし、言いに行くわ、アビー先生に! ジェシカが犯人だったって!」

「それは止めた方がいいと思う」


 今にも走り出しそうだったわたしの片手を、ローザはしっかりと握っていた。


「今言ったところで信じてもらえるどころか……また怒らせてしまうだろうね」

「……それも、そうね」


 わたしは萎んだ花のように、その場にすとんと座り込んだ。


「どうしたら良いかしら……」

「そうだね……。このまま放っておくのは辛いだろう。これまでリリーもそうして苦労してきただろうからね……」


 そう言ってくれるだけでも、わたしは幸せな気分になれた。あの四人の輪に加わっていたときとは違う表情で、わたしに優しく微笑みかけてくれる。それからローザは、細い指を顎の下に添え、少しの間考え込んでいた。


「この件をルーシーの嘘でリリーに押し付けて終わらせたとはいえ、ジェシカはまだ気が気でないだろう。もし何かの拍子でバレて、自分が酷い〈救済〉を受けるんじゃないかってね。ジェシカは、エミリアやルーシーとは違って、嘘を突き通せるような人には見えないから――」


 ローザは音楽を奏でるように、スラスラと滑らかに言葉を続けている。俯いてしゃべっているから、ほとんど独り言みたいだった。けれど、何か思いついたのか、顔を上げてわたしを見つめた。


「そんな彼女には、ワタシなら手紙を書いてあげるかな。君がやったことは知ってる、って書くんだ。丁寧にバラもプレゼントしてあげよう。けど、またバラ園から折って持って行くのはリスクが高すぎる。……確か礼拝室にバラが沢山供えてあったね。あそこからバラを拝借すればいい。礼拝室のバラの本数までは、さすがに先生でも覚えていないだろう」


 自分の作戦を語るローザは、これからの相手の反応を愉しむいたずらっ子みたいだった。キラキラした瞳を細めてニヤリと笑っている。


「想像してご覧。自分の部屋の引き出しを開けて、手紙とバラを見つけたジェシカの顔を。ふふふ、随分と間抜けな顔だろうね」


 言われた通り、頭の中でジェシカの顔を思い浮かべてみた。可笑し過ぎて、わたしも思わず笑ってしまった。わたしがあまりに大きな声で笑ったので、遠くの四人がこちらを見て首を傾げている。それがまた可笑しくて、余計笑いが止まらなくなった。


「うふふ、ありがとう、ローザ。こんなに笑ったのは初めてよ。おかげで元気が出てきたわ」


 わたしは何とか笑いを抑えながら言葉を続けた。


「早速行ってくるわ!」

「ワタシが行かなくてもいいのかい?」

「いいの、自分でやりたいから。素敵なアイデアを教えてくれてありがとう!」


 アビー先生も他の子たちも外に出ている。今がチャンスだ。わたしはスケッチブックを持ち、水を与えられた花のようにシャキッと真っすぐに立ち上がった。


「ああ。くれぐれもバレないようにね」


 ローザの声援を背に、わたしは一人、校舎へと戻った。心臓は高鳴り始めていた。これまで色んなことでドキドキしてきたけれど、こんなに楽しいのは初めてだ。

 仕返しなんてしたこともなかった。したくてもできなかったから。

 足は軽やかだった。進むべき道を示してくれる人が現れたから。

 か弱い百合にもきっと出来ることがある、今ならそう信じることができる。


 先生がバラ園にいることを確認してから、そっと中へ入った。二階へ続く階段を駆け上がって礼拝室に入り、何一つヒヤリとすることもなくバラを一輪手に入れた。

 それから階段を降りて、廊下を走り抜け、ジェシカとエミリアの部屋に入った。ジェシカの机はすぐに分かる。片付けが苦手なジェシカの机はいつも物で溢れかえっているからだ。

 わたしはジェシカの机の上で、持ってきたスケッチブックのページを破いた。その紙きれにメッセージを書き殴ってやった。


 思えば手紙なんて誰かに書いたことがない。初めての手紙がジェシカ宛てだなんて……。ロマンチックさが全くないのが残念だけど、仕方ない。


 書き終えると、初めての贈り物と一緒にジェシカの引き出しに入れて、部屋を出た。


 あのプレゼントをいつ見るかしら? 楽しみだわ。


 プレゼントを贈る側の満足感と、何かに抗う時の高揚感を、今初めて知った。長い廊下をスキップしながら、わたしはローザの元へと戻っていった。




 贈り物の返事というものはすぐに来ないものなのか、しばらくは何も起きなかった。嘘つきルーシーは相変わらずツンとしているし、リーダーのエミリアは三人組の面目が守られて、満足そうに威張っている。心なしかジェシカがほんの少しぼーっとしている時間が増えた気がするが、ここのところ続いている雨のせいかもしれない。それでも見たところいつも通りだった。授業の合間、三人組は教室の中心でうるさくお喋りしている。


 そうして返事がないまま、数日経過した。朝目が覚めると、部屋の窓の外から漏れるきらきらした日の光は、まぶしいくらい強い。昨晩の雨とはうって変わった天気に、今日一日は何かいいことがありそうだと思った。


 けれどわたしの予想は、大きく外れていた。


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