episode13. 新たな一歩

 蒼汰に教えてもらいながら一日かけて修正した論文が返却されたその日、美咲はインターンの日ではないのにオフィスに駆け込んだ。


 「漆原さん!!」

 「あ?何してんのお前」


 来るはずの無い美咲の登場に漆原は首を傾げた。

 けれど美咲は漆原の疑問など無視して、ノートパソコンを開いてモニターを漆原に突きつけた。そこには下された評価が記載されている。


 「論文なんとA++!!」


 美咲はふっふっふ、とどうだ見たかと得意満面に高笑いをした。

 しかし漆原は特に感動する事も無く表情一つ変えず、あっそ、とだけ言うと自分のパソコンに視線を戻してしまう。

 まるで興味の無さそうな上司の姿に口を尖らせ、美咲はもう一度パソコンを漆原にぐいぐいと突きつける。


 「うるせーな。邪魔だ。どけ」

 「えー!もっと喜んで下さいよ!A++ですよ!?」

 「喜んで欲しけりゃ開発関係でA++取って来い。んな事より、これ」


 やはり漆原は興味を示してくれず、それどころか自分の話に転換してしまった。

 ぶう、と美咲は不満を前面に押し出したけれど、漆原が見せてくるノートパソコンの画面にくぎ付けになった。

 そこに表示されているのはいくつかの動画ファイルで、美咲はこれ以上開けないだろうというくらい大きく開いて凝視した。


 「漆原さん、これ……」

 「話を聞きに行く必要がありそうだな」


 漆原はコツンとモニターを突くと、ポケットから車のキーを取り出した。


 「特別だ。連れてってやる」

 「あ、有難う御座います!!」


 そして、美咲は再び漆原の車に乗りオフィスを出た。


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