episode3. Alife-Remedy Gene Resemble Youself
「アンドロイド拾った?」
「はい。可哀そうだから家に連れて帰ってあげたいんですけど」
「家に連れて帰る~!?」
「は、はい」
漆原は、可哀そうって何言ってんだよ、と嫌そうな顔をしてため息を吐いた。
「警察行けよ。何で俺に言うの」
「それがですね、所有権が一時的に私に移行してるからできないとかなんとか……」
「移行?拾ったのっていつどこで?私有地?不法投棄?」
「母名義のマンションのごみ捨て場だから不法投棄ですかね。三か月くらい前です」
「三か月!?アホか!!完全に所有権移行してんじゃねーか!」
「へ?」
漆原は勢いよく立ち上がり、意味が分からないと言わんばかりの呆れ顔をした。
きょとんとしてる美咲の顔をじろじろ睨んでから、脱力したまま椅子に座り直すとがっくりと頭を抱えた。
「所有者不明の状態で私有地で、しかも管理人が三か月保有したら管理人に所有権が移る!もう警察だって動かねーわ!」
「……つまり?」
「つまり!お前のかーちゃんが税金払うんだよ!」
「げえ!嫌だ!」
「ほんっとアホだな」
嘘だろと心の中でぼやき、美咲は馬鹿にしてくる漆原に縋りついた。
「漆原さん!お願いが!」
「断る!」
「漆原さん~!!」
「嫌だよ!なんでプライベートで他人の尻拭いしてやんなきゃいけないんだよ!」
「ででででもこれ多分美作ブランドの旧型だと思うんですよ!ほら、貴重品かも!」
「は~!?」
何とか漆原の気を引こうと、美咲は撮影しておいた壊れたアンドロイドの写真を見せた。
関わりたくないという顔をする漆原の視界に入れようと、顔面間近にぐいぐいとスマホを突きつけた。
「だー!分かった分かった!見えねえから離れろ!」
漆原は渋々だが承諾してくれて、美咲はやったぁ、と飛び跳ねてスマホを渡す。
すると何故か漆原は食い入るようにまじまじと見て、眉間にしわを寄せて真面目な顔をした。
「こいつは――」
「分かります?」
「《A-RGRY》だ……」
「えっ、この子紅茶飲むんですか?」
「アホか。アンドロイド史勉強してねえのかお前は。必須科目だろ」
「いたたたた!」
漆原につむじをぐりぐりと親指で押され、美咲はぺんっとその手を払って逃げた。
しかし、漆原はいつものように馬鹿にして笑ってはくれず、真剣な顔でパソコンを開いた。素早い手つきでブラウザを立ち上げると、何やらニュース記事を探し出した。探す事数分、漆原は美咲にモニターを見るよう促す。
「こいつは《Alife-Remedy Gene Resemble Youself》、略してA-RGRY」
モニターには壊れたアンドロイドと同じ顔をしたパッケージ商品が映っていた。
髪は購入者が好きに調整できるようロングヘアになっていて、服も飾り気のないどこでも売ってそうな白いカットソーとパンツだ。パッケージの段階で個性を付けすぎると購入対象者が狭まるため、敢えてシンプルな服装にされている。
ディスプレイ用に整えられた機体はとても知的で爽やかな雰囲気で、女性モデルが腕を組んで歩く動画が広告になっていた。
しかし記事のタイトルはそれには似つかわしくない不穏な物だった。
「A-RGRYストーカー化で二百九十二名死亡!?美作グループは購入者に返却を呼び掛けている……って、もしかして……」
「そう。こいつは《ラバーズ》初期型だ」
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