第4話 一夜明けて

『ゼウス』が復活した。


【なぜ今になって?】


【初代『ゼウス』と同一人物か?】


【おもしろくなってきたぜぇい!】


 同盟内で様々な発言が飛び交った。


 アポロンは、


【なぜ今になって『ゼウス』というプレイヤーが登録されたのかわからない。一応調査はしてみる。他言は無用だ。何かわかったら報告するよ。じゃあ今日はもう遅いから解散しよう。みんなイベントお疲れ様!次のイベントも頑張ろう!】


 ということで、今日はお開きとなった。


 僕のシックスセンスが告げている。この『ゼウス』は絶対、初代『ゼウス』と関係がある!

 次のイベントは波乱の予感がする。


 時間は、23時を過ぎたところ、

いつもならもうすぐ寝る時間だが、今日は色々驚かされることが多すぎた。興奮して全く眠たくない。


「お酒の力を借りよう。」


 備え付きの冷蔵庫を開けると、一本のワインが入っていた。


「ロマネコンティ?」


 聞いたことあるようなないような?まあおそらく安物だろう。全部無料だし一杯頂くか。

僕はコルクスクリューを使ってコルク栓を開け、ワイングラスにワインを注いだ。


ゴクッ……


 んんん、これはいける。ワインは初めて飲んだが結構うまいんだな。


 それにしても今日は色々あったな……


 初代神悪ランク2の江口光さんに会って、いきなり光さんの探し人の『プシュケ』見つけて、でもブロックされて、同盟抜けてまで、情報聞き出そうとしたら、拒否されて、露頭に迷ってたら最強同盟に勧誘されて、んで『ゼウス』が復活した、と。


 明日、起きたら光さんに話さないとな。


 酔いが回ってきた……これなら寝られそうだ。


 光さんの寝ているベットに入り、少し離れて床に就いた。

寝ようと思った瞬間、光さんが寝がえりを打って、僕の方を向いた。

僕は光さんの寝顔を見た。まるで天使のような寝顔だ。この寝顔の裏にどんな壮絶な過去があったんだろうか。

そういえば、光さんが寝る前に自伝をもらったな。早めに読んでおいた方がいいだろう。明日バイト中に読むか。そう思った直後、僕は眠りについた。




「結斗ーーー!!!起きろーーー!!!!」


 光が大声で言った。

んんん、もう朝か……

僕は眠気眼をこすりながら、ベットから起き上がった。


「おはようございます……」


「おはよう、結斗さあ……、昨日冷蔵庫のワイン飲んだだろ?あれは、別料金で結構高いワインだったんだけど……」


 ドキッ!

なんだって、1万円くらいなら払えるけど、いったいいくらなんだ?


「そうだったんですね、払います。いくらだったんですか?」


「スマホでググってみな。」


 光の言う通り、『ロマネコンティ』で調べてみた。

えっと、なんか数字が多いぞ?一、十、百、千、万……十万…………ひゃくまん!?

そんなアホな、ぼったくりや!こんなん払えるわけがない。どうしよう……

僕は完全に目を覚ました。


「まじすか!?こんな高額だったんすか!?無理だ……払えない……」


 僕は絶望に打ちひしがれていた。その時、光さんが笑顔で、


「だと思って、もう払っておいたよ。次からは気をつけなよ。」


「え、ありがとうございます!死んでも飲みません!」


 なんでそんな大金もってるんだ?光さん何者!?

 とりあえず事なきを得た。

 そのあと、光さんが真剣そうにこう言った。


「その代わりといったらずるいかもしれないけど、一つ約束してほしいんだ。僕と一緒に『プシュケ』を探すのを手伝ってくれないか?お願いだ。」


「もちろん、僕はそのつもりですけど。」


「ありがとう!ここは、自分の家だと思って使ってくれていいから。お酒以外は全部タダだからね。Wi-Fiも最強のが飛んでるよ。結斗にはネット上で、『プシュケ』を探してほしい。僕はリアルで探すから。」


「わかりました。お言葉に甘えて使わせてもらいます。実は『プシュケ』さんの件でお話があります。』


「なんだって!?どんな些細なことでもいいから聞かせてくれ!」


 グー


 話をしようとしたとき、光さんのお腹の音が鳴った。


「その前に朝ごはんにしよう。僕と同じのでいいかな?」


すると、光さんは備え付けの電話で、ロビーに電話をした。


「朝定二つで。あと弁当も。」


3分後に朝食が到着した。早すぎる……


「ここの納豆キムチ卵かけご飯定食は絶品だよ。キムチが自家製なんだ。」


 ああ、だから昨日の豚キムチは旨かったんだ。納得。

僕は朝食を食べながら、昨日の夜に神悪2で『プシュケ』を偶然見つけたことを光さんに話した。


ブー!!!

 光さんが納豆キムチ卵かけご飯を吹き出しながら言った。


「なんだって!?神悪2で『プシュケ』を見つけたって!?それで、話はできたの?」


「いいえ、色々やってみたんですけど、ブロックされて話せませんでした。」


「そうか、それは残念だ。でも諦めないで、引き続きアタックしてみてくれ。」


「わかりました。あと、『ゼウス』が復活しました。」


ブー!!!ゴホゴホ、


 光さんがまた吹き出して咽ながら言った。


「それは本当かい?!?これはまずいな……」


「まずいってどういうことですか?」


「いや、なんでもない、でも、これで一つ確信した。『プシュケ』と『ゼウス』はなんらかの関係がある。」


 やはり、僕も二人は何かつながりがあると思っていた。偶然にしてはおかしい。光さんが言うなら間違いないだろう。


「多分、トリガーとなったのは、君だ、結斗くん。」


「どういうことですか?」


「恐らく、君が『プシュケ』と接触しようと試みたからだ。それが引き金となって『ゼウス』が姿を現した。」


 そう言われると、そんな気がするけど、一体なぜ?


「実は、十年前にも、二人が関係しているかもしれないと思った出来事があったんだ。詳しくは僕の自伝に書いてある。ぜひ読んでみてくれ。」


「わかりました。今日のバイト中に読んでみます。」



朝食を食べ終わった後、スマホの時計を見た。9時半を過ぎていた。


!!!!

ヤバい!たしか今日のバイトは10時からだったはず!店は暇だけど、店長遅刻にはうるさいんだよな……


「すみません!バイトあるんで、一旦抜けます!終わったらまた来ますね。じゃあいってきます!」


「行ってらっしゃい、気をつけてねー。あ、これ弁当!」


「ありがとうございます!」


 僕は、弁当を持って、慌ててホテルを飛び出した。

しかし、僕のバイト先はここから近いことを思い出した。急いで行けば10時には間に合う!

僕はコンビニで、お茶だけ買って、バイト先へ急いだ。

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